「このままだと、Amazonで販売できないかもしれない。」
Amazonはアメリカのモバイルアクセサリー市場の約半分を占めることが私たちのリサーチの結果判明していた。ワイヤレス充電器はそのモバイルアクセサリーカテゴリーに属するので、Amazonで販売できないとなると、単純に市場の半分を失う危険があった。
正確には販売は可能だが、ブランド名を使ったオフィシャルストアが開設できないという事である。
問題の発端はそのブランド名にあった。
具体的なブランド名を出すのは控えたいが、そのブランド名は汎用的な言葉を使ったもので、別の業界で同じ名前のプロダクトがたくさん存在した。
そのため、Trademark (商標)を取る際に使用用途を制限する必要が出たのである。
この問題が、間接的にAmazon出店の際の壁となった。
私たちとしては、ブランド名を変更すべきだと考えていた。その理由は、このAmazonの問題だけではない。
使用用途をワイヤレス充電器に制限してしまうことが問題だった。
リサーチの結果、今後ワイヤレス充電器はそこまで大きく伸びないという結論になった。
その極め付けが、Appleのワイヤレス充電器、AirPowerローンチの取りやめだ。
「今の技術力では消費者を満足させることができない。」というのが取りやめの理由だが、事実、既存のワイヤレス充電器のユーザ満足度はそこまで高くなかった。
今後市場の急拡大を望めないワイヤレス充電器にブランド名を制限するのは得策ではない。ましてや、これからマーケティング費用をかけてブランドを育てていくと考えているので、この問題は今後のブランド展開をする上で大きなボトルネックになってしまう。
結局、クライアントを説得してブランド名を変更することになった。
しかし、本当の問題はこれからである。
すでに前のブランド名が印字された商品が1,000ユニット以上在庫としてあり、前回ご紹介した B8taに、以前のブランド名で出展することが決まっていた。
ローンチまでわずか2週間しかない状況で、B8taの出店準備、Websiteの修正、営業用のカタログの作成を行いつつ、新しいブランド名でのロゴ作成を行った。
さらに、ちょうどこの2週間の間に私のボスであるCreative Directorとクライアントがバケーションに入ってしまった。日本だと、こういう状況ならバケーションを遅らせることもあっただろうが、ここは北米。そんなことは基本的にはあり得ない。
クライアントのプロダクトを熟知しているのは私だけになる。これまで、クリエイティブのディレクション経験の無かった私は焦った。
「やるしかない・・・。」
私は腹をくくった。
「第17話: 最後の2週間とこの先」へつづく
[ブランドマーケターのバンクーバー留学ストーリーの一覧]
第0話: ブランドマーケターのバンクーバー留学ストーリー
第1話: あるきっかけ
第2話: 英語への憧れと留学への決意
第3話: 留学前のラストスパート
第4話: カナダ到着、学校初日、早速の危機感
第5話: バンクーバーでの英語学習 Part 1 「Eh+」
第6話: バンクーバーでの英語学習 Part 2 「Sprott Shaw College プレゼンテーション強化コース」
第7話: バンクーバーでの英語学習 Part 3 「ランゲージエクスチェンジ」
第8話: バンクーバーでのバイト探し
第9話: Co-opプログラムとインターン
第10話: インターンからアルバイト、そして帰国
第11話: 日本帰国とバンクーバー再渡航
第12話: 就職活動、苦悩、意外なきっかけ
第13話: 見込み薄のミーティング 、そして…
第14話: 初サンフランシスコと初英語ミーティング
第15話: 英語リサーチとクライアントの説得
第16話: Trademark問題、Amazonストア、ブランド名の変更
第17話: 最後の2週間とこの先