カナダに移り住んでから1ヶ月が経ち、学校生活にも慣れてきた。
数週間たつと、いかに英語での生活が不便かが身に染みてわかるようになる。
なかなか電車が来ない時に「どうしたの?」と駅員に聞いても、その返答が全く聞き取れないので、よくわからないまま「ok」と言って黙って待たざるをえない。
ホームステイ先で洗い物をしている時に、非効率な洗い方を指示され、もっと効率的な方法があることを説明したかったが、うまく言えずに黙って言われた通りするしかない。
1つ1つは取るに足らない小さな出来事である。
しかし、これらが積み重なって大きなストレスになっていった。
「コイツはダメだ。話にならない。」
そんな顔をされる時が特に辛かった。
一生懸命伝えようとすればするほど、困った顔で苦笑いされてしまい、何もなかったように話を戻される。
なんとも言葉にできない悔しさだった。
周りにいる学生は皆若い、20歳に成り立ての青年や18歳くらいの大学生もいる。
親のお金で呑気に遊学(遊びの留学)に来ているような学生もいた。
「なんでこんなやつにバカにされないといけないのか?」
正直そう思った。
彼らに非は一切ない。ただ悔しさのあまり全員をぶん殴りたい衝動にかられたこともある。
どんどん自信が無くなっていくのがわかった。
社会人になって、仕事での成功体験もある。
渡航前に短期間で目標金額を達成した自負もあった。
しかし海外での生活はまるで、それら全てがただの勘違いだったかように感じさせた。
実は私は学生時代にニューヨークに1ヶ月滞在していたことがある。
その時は英語を全く使わず、どうやって生活していたのか今でも不思議に思う。
そこで出会ったある人がいる。
その人は日本人で、プライドが高かった。私はニューヨーク滞在中にその人にこっぴどく怒られた。冗談のつもりでからかったことが癇に障ったのである。
初めは冗談の延長かと思っていた。
当時の私は「面倒くさい人」と思った。
6年たった後、その人の気持ちがわかった。
「なんでこんなやつにバカにされないといけないのか?」
おそらく、そう思ったのだろうと思う。
当時の自分の軽率さに呆れた。その人にまた会う機会があれば改めて謝りたいと思った。
そんな心が折れそうなカナダ生活であるが、良いこともあった。
英語が拙い私の話でも、しっかりと聞いてくれる友人の存在である。
振り返ってみれば、彼の存在は私の英語上達に大きく寄与したと思っている。
私の中のストレスや鬱憤をよく彼にぶちまけた。
はじめはストレスや鬱憤すらもうまく英語で表現することができない。
彼はそんな拙い英語でも、一生懸命に意図を汲み取り理解しようとしてくれたのだ。
そのおかげで、私は何度も自分の思いを言葉にしようと挑戦することができた。
苦労の末、伝えたいことを理解してもらった時に達成感を感じた。それが私の英語に対する自信にも繋がった。その小さな自信の積み重ねが英語上達への道だったと思う。
もし彼のような存在がいなければ、萎縮して英語恐怖症になっていたかもしれない。
萎縮していたら海外就職は到底不可能で、早々に諦めて逃げ帰っていただろうと思う。彼には本当に感謝の気持ちしかない。
この頃、ホームステイ先を出ようと考えていた。
ホームステイ先とは正直うまくいっていなかった。
そしてなにより、ホームステイよりも都心でルームシェアした方が歳の近い友人と過ごす時間が増え、それが英語上達すると思ったからである。
この友人の存在がそれを確信に変えた。
結果的にルームシェア自体は成功だった。
しかし問題はルームシェアをする相手にあった。この後、とんでもない曲者とルームシェアするはめになったのである。
(つづく)
学校に少し慣れてくると、ある程意思疎通が取れるようになってきます。
しかしそれは単純に同じ時間を長く過ごすことで共通認識が増え、多くを語らなくても意思疎通ができるようになっただけの話です。
なにも英語力が急上昇したわけではありません。
学校に通い始めてちょうど1ヶ月くらい経つと、この「勘違い」を発症すると私を考えています。
このまま同じ環境に居続けると英語の伸びが鈍くなります。学校内である程度、意思疎通が取れるようになったら新しい環境に飛び込んでいくことをおすすめします。
私の場合は引越しや趣味、イベント参加を通じて、できる限り学校外でコミュニケーションをとるよう尽力しました。
少しでも「慣れ」を感じれば新しい環境に挑戦するサインです。
腰が重くならないうちに、どんどん次のステップを踏みましょう。
第8話: ホームステイからの脱出、ルームシェアと恐怖の夜へ続く
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