Touch-Baseの11人目のインタビュウィーはセナさんです。

セナさんはカナダのバンクーバーにてFrog Creator ProductionにてWeb開発を行う傍ら、これまで200人以上のエンジニア、デザイナー、アニメーターの海外就職をサポートされた実績があり、クリエイターの海外就職のエキスパートです。

これまでの海外で活躍するマーケターへのインタビューとは違って、今回のインタビューはマーケティングとも親和性が高い、クリエイターの海外就職をテーマにお話を伺ってきました。

プロフィール:
Yoshitaka Senna Goto
バンクーバーのうぇぶ屋という個人ブログを運営し、海外のIT業界に関する情報発信を行っていた事をきっかけに、主にIT、映像、マーケティング分野における現地就職やキャリアを意識した留学サポートを行う企業『Frog』を設立。日本と海外で培ったIT業界の知識や常識を持ち、今後日本人エンジニアやクリエイターの海外進出の一般化を目指し活動中。

やる理由は使命感!Frog Creator Productionの設立経緯

野村:
まずはセナさんが運営しているFrog Creator Productionの話を伺いたいと思います。Frog Creator Productionの立ち上げの経緯を教えて頂けますか?

セナさん:
もともとバンクーバーに来てしばらく経った頃、フリーランスとして独立を考えており、バンクーバーのうぇぶ屋というブログサイトの運営を始めました。これがFrogの前身ですね。

サイトを始めてから2ヶ月くらいから英語の制作案件や留学相談がくるようになりました。

野村:
すごいですね。たった2ヶ月ですか。

セナさん:
そうですね。実はバンクーバーのうぇぶ屋に行き着く前にいくつかブログを作っては潰してを繰り返していますからね(笑)

最初の1年目は月数件程度、2年目からは月数十件程度の問い合わせがくるようになり、毎日Skypeしないといけない状態になり、回らなくなってきました。

そのせいもあり有料相談に切り替えようと考えましたが、結局は無料で相談をうけることにしました。今考えると英断だったなと自分で思います。

野村:
なるほど。ちなみに無料にしようと決断した理由をお伺いできますか?

セナさん:
使命感です!(笑)

野村:
(笑)

セナさん:
話を聞いてると皆さん真剣で、これにお金を取るのは申し訳ないと思ったんですね。

そして今のFrogのコンセプトでもある「海外就職を日本のエンジニアの当たり前にする」という思いが強くなってきたのも理由の1つです。

無料にしたおかげで、技術的な話や人生の話を聞けて勉強になりましたし、無料相談を通してデータを取ることができました。そしてなにより今のFrogコミュニティがあるのも相談無料にしたおかげかなと思います。

野村:
なるほど。バンクーバーのうぇぶ屋がうまくいって、そこからFrog法人設立になるわけですね?

セナさん:
いえ、実は始めは会社設立するつもりはなく、個人事業としてやる予定でした。

その当時、尊敬していたWebクリエイターボックスのManaさんがバンクーバーに戻りたいという話をされていて、そこで一緒に会社をやろうという話で盛り上がって会社設立を決意しました。

当時、バンクーバーのうぇぶ屋経由で問い合わせもあったので会社としてうまく機能するだろうと思って決断しました。

それがスタートして最初の2年ほどは大変でしたが、3年目から海外就職の成功事例が蓄積されてきて今は軌道にのって順調に運営しています。

海外就職成功のための3つの条件

野村:
海外就職について詳しく伺っていきたいと思います。

これまで200人以上のクリエイターの海外就職のサポートを行ってきて、どういう方からの問い合わせが多いですか?

セナさん:
シリコンバレーや他の国への進出を視野に入れて技術力向上のために来たいというのがおよそ40 – 50%程度、日本の厳しい労働環境を脱したいというのが30%程度、とりあえず英語を勉強したい、海外に行ってみたいからというのが20 – 30%程度ですね。

野村:
その中から海外就職を達成する人の割合はどれくらいですか?

セナさん:
我々がサポートしてきたところでいうと70%くらいですね。

野村:
70%ですか・・・かなり割合いが高いですね。

セナさん:
そうですね。ただ目指すところは限りなく100%に近い数字なので、まだまだ勝率を上げる方法を模索しています。

野村:
素晴らしいです。海外就職成功する人と失敗する人の傾向はありますか?

セナさん:
あります。海外就職成功のための要素は大きく分けて下記の3つあります。

– コミュニケーション力 (+英語力)
– 技術力
– 自由に働けるビザの期間

これらのバランスが取れている人が成功する傾向にあると考えています。

10年前、僕がバンクーバーに来た当時は本当に技術力だけがあれば、さらに言うと日本での経験があれば就職できるくらいのレベルでした。それが年を追うごとにビザの規制が厳しくなったのと、バンクーバーが世界から注目されジョブマーケットの競争が激しくなり、カナダ人や他の国の外国人との差別化が必要になってきました。

野村:
なるほど。コミュニケーション力というのは英語力ということでしょうか?

セナさん:
ここでいうコミュニケーション力というのは単に英語力ではなく、密にコミュニケーションをとって課題抽出してその解決策を提案する能力がある、自身の成果・実力をアピールする力があるかどうかを差します。

英語力のレベルが高い人でもそのへんのコミュニケーションスキルが弱い人がいるのでコミュニケーション力とさせて頂きました。

野村:
なるほど、確かにそうですね。
具体的に海外就職を成功するために最低限、どの程度のコミュニケーション力・技術力が必要でしょうか?

セナさん:
コミュニケーション力の部分でいうと、英語力はILETSのGeneralの5.5くらい、あとはポートフォリオを使って自分をうまくアピールできる必要はありますね。面接官が必ずしも技術畑の人とは限らないので、素人にもうまく伝えられるコミュニケーション力は欲しいところです。

技術力の部分は本当に半年ごとにトレンドが変わるのと、フィールドによっても平均が変わってくるので一概には言えませんが、Web系だと日本での経験が3年くらいあってHTMLとCSSは基本的に問題なく使えて、Javascriptを使ったフレームワークで何かを開発したことがあり、Githubに実績をしっかり上げているレベルは欲しいですね。

とはいえ、技術面で全くの未経験からでも就職できた人もいるので、やはりバランスが重要になってくるのかなと考えています。

海外就職失敗の5つのパターン

英語が喋れるからなんでもできる!と勘違いしている

野村:
逆に失敗する人の特徴はありますか?

セナさん:
バランスの話と逆になりますが、何か自信のあるスキルを持っていて過信してしまい、他の部分を甘く見ている人は失敗する傾向にあるかなと思います。

典型的なのは英語が喋れればなんでもできると勘違いしている人。

海外にいればほとんどの人が英語を喋れるので、それ自体は強みになりません。

実際にコミュニケーションの部分はネイティブのレベルで完璧だったけど、技術力の部分を甘く考えすぎて就職達成できずに帰った人もいました。

技術力は申し分ないけど、コミュニケーション力が弱い

セナさん:
逆に、技術力の部分でいうとバンクーバー内ではトップクラス、さらに英語もそこそこ喋れるのにシャイでアピールができなくてうまくいかなかった人もいます。

特に北米だと「提案力ありきでの技術力」が重要視されるので、コミュニケーション力がないと技術力もないと勘違いされてしまうこともあります。

野村:
確かに素人から見ると、技術力って分かり辛いですよね。

セナさん:
そうですね。もしシニアレベルのクリエイターが面接先にいれば変わっていたかもしれないので運が悪いというのもありますが、出るべきミートアップに出て自分をもっとアピールする必要があったのかなと思います。

ビザのプランニングが甘い

セナさん:
これも前述のバランスの話と繋がりますが、コミュニケーション力・技術力は問題ないが、ビザのプランニングが甘くて失敗してしまうケースがあります。これは自信のある方がよくはまる落とし穴で、見ていてもったいないなと感じます。

例えば1年間有効のビザしか持っていないにも関わらず、初めの3ヶ月語学学校に行き、次の3ヶ月間就職活動をするもうまくいかず、残り半年しか滞在期間がない状態で問い合わせが来ることがあります。正直その状態でできることはほとんどありません。

野村:
そうですね。

よっぽどの理由が無い限り、半年しかビザが残っていない人を雇う会社はあまりイメージできないですね。

憧れの国に行くのが目的になっている

セナさん:
他にもどうしてもカナダに永住したい、ロンドン・ニューヨークに行きたいなどロケーションに対してこだわりが強すぎる人はうまくいかない傾向にあると思います。

海外就職を通して技術力の向上や人生のオプションを増やすなど、自分が得られる内容にフォーカスしている人の方がうまく動いている印象があります。

例えばサーフィンが好きだからオーストラリアに行きたいっていうのは海外就職というよりもバケーションや観光です。目的地に行くこと自体が渡航の目的になってしまい、そのついでに何か学びがあれば良い・・・程度の姿勢になってしまいがちです。

その程度のモチベーションだと海外就職は難しいのかなと思います。

もちろん、それをモチベーションにして頑張る人がいるのも事実だし、例えばテック系だとシリコンバレーに行って最先端を学びたいというのはありだと思います。

初っ端から海外を楽しみすぎる

セナさん:
海外に来た当初はテンションがあがって、就職達成前から友達や家族を呼んで旅行三昧しようとする人がたまにいます。

僕らから旅行するなとは言えませんが、頑張る時期と楽しむ時期をしっかり分けて考えるべきです。海外就職が目的なのであれば、それを達成するまでは就職することにフォーカスすべきだと思います。

英語しか喋らないのは海外就職達成に効果的?

野村:
ちなみに海外に出たら英語しか喋らないというアプローチが一般的で、私も渡航後1年程はそれを実践していました。海外就職成功のために、このアプローチは効果的だと思いますか?

セナさん:
前提として技術力はあって、あとは英語力が足りないという状況の人にとっては効果的だと思います。Frog経由で留学した人でも就職するまでは英語しか喋らないっていう人はけっこういます。

ただ、技術力もしくは情報量が足りていない場合はあまりオススメしていません。

その理由はFrogのコミュニティには日本人クリエイターで現地就職した先輩がたくさんいるので、そこから技術習得のために話を聞く、現地の就職情報を教えてもらう方が就職に結びつきやすいためです。

皆さんの海外就職達成後のキャリア

野村:
バンクーバーで就職を達成した後、皆さんはどういうキャリアを歩まれるのでしょうか?

セナさん:
皆さん就労した後は就労ビザや永住権を取得しておよそ3年程は現地に残ります。その後は日本に帰る人、別の国に行く人など本当に人それぞれですね。

野村:
なるほど。日本に帰った方はどういうキャリアを歩まれているんでしょうか?

セナさん:
ほとんどの人は大企業に行かず、面白いスタートアップに行く人が多いですね。例えば、メルカリ、クックパッド、あとはヌーラボに行った人もいます。

他にも日本でスタートアップを立ち上げ、その会社をサンフランシスコの会社に買われてサンフランシスコに行った人もいますね(笑)

野村:
すごいですね。それはバンクーバーで高いレベルの技術力を身につけたから、そういう会社に就職できたということでしょうか?

セナさん:
そうですね。こっちの制作会社でスキルが伴っていないと試用期間の間ですぐに切られてしまいます。それで2、3年と続けて雇用されるにはある程度のレベルが必要です。スキルセット的には日本でちょっとやってましたっていうレベルよりは高いと思います。

野村:
別の国に行った人はどうでしょうか?

セナさん:
別の国に行った人はデンマーク、ベルリン、アフリカなど皆さんが行きたい国にいっている印象ですね。ただ国別でいうと一番多いのはアメリカですね。

僕の知り合いでカナダの永住権を取得後、サンフランシスコに行った人もいます。

その人はGoogle IOなど大きいイベントがあるたびにサンフランシスコに訪れて、現地の制作会社とコネを作って就職しました。それまでに合計で5、6回ほどサンフランシスコに訪れたんじゃないでしょうか。

サンフランシスコで就職するにはビザの問題はもちろん、求められる技術のトレンドもすぐに変わるのでタイミングが重要です。そのため回数を重ねるのが成功のコツだとよく聞きます。

その人はカナダでの永住権をうまく使ってサンフランシスコでチャンスを掴んだ感じですね。

Frogの今後の展望: 海外就職をエンジニアの当たり前にする

野村:
最後にFrogの今後の展望を聞かせてください。

セナさん:
海外就職を日本のエンジニアの当たり前にするためには、事例がまだまだ少ないので、成功事例のパターンと数を増やしていきたいですね。

主に未経験のクリエイターの就職、技術力のある人のステップアップの両軸で押していきたいと考えています。

未経験者の就職に関して、今までクリエイターの海外就職を支援してきて確信したのは、バンクーバーは海外の登竜門として理想的な街ということ。1年という期間で未経験からでも就職できるのはバンクーバーくらいで、未経験者の人にもチャンスがある市場です。

技術力のある人のステップアップに関して、北米にいても日本のクリエイターのレベルはかなり高いと感じています。もちろんそういう方には日本でも活躍してもらいたいんですが、技術力を活かせる環境という面では海外の方が恵まれていると感じています。

ただ技術があってもレファレンスがないと就職は難しいのが北米の現状です。まずはバンクーバーで就職してレファレンスを取得する、それを他の国への足がかりにしてもらえればと思います。

最終的に日本に帰るという選択を取るのは良いんですが、その際に海外の労働環境と天秤にかけてどっちが自分にとってプラスなのかという選択ができる状態にしたいなと。

野村:
海外就職のハードルを下げたい、ということですね。

セナさん:
そうですね。結局そこは海外就職に関して情報があるかないかだと思うので、必要な情報と事例をどんどん世に出していくことが必要なのかなと考えています。

僕らの強みとしては今まで10年以上かけて集めたデータと情報量、そしてクリエイターのポートフォリオをみて技術力が高い低いの判断ができる点ですね。クリエイター系のほぼ全ての職種の事例があるので、その人の強みを踏まえてポートフォリオをどう提示すれば良いのかアドバイスできます。

あとはクリエイターのコミュニティがあるのも強みの一つですね。

例えば僕自身はiOSのアプリを作ったことはありませんが、iOSのアプリ制作のポジションで就職した人がFrogのコミュニティ内にいるのでその人に聞けば良い、必要であればその人とSkypeを繋いで話をすることもできます。

僕たちは無料でサービスを提供しているので、海外進出を考えているクリエイターの人にうまくFrogを利用してもらいたいなと思います。

まとめ

今回はFrogのセナさんに、僕が海外就職を検討していた時期に聞いてみたかった質問をぶつけてみました。海外渡航時にほぼ必ず使う留学エージェント、しかし就職まで視野に入れたプランニングができない会社がほとんどです。僕自身「英語力をつけるまでアルバイトするしかない」とも言われて納得できなかったことを覚えています。

そんな中、ここまで海外就職・留学について熱心に考えているのは素晴らしい!のひとことにつきます。Frogの今後の展開に期待です。頑張ってください!