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第13話: 面接と “We’ll be In touch!”の先にあるもの | カナダのマーケター海外就職ストーリー

第13話: 面接と “We’ll be In touch!”の先にあるもの | カナダのマーケター海外就職ストーリー

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私は面接のため、ある会社のオフィスに向かっていた。

オフィスがあるのはダウンタウンの外れ、少し治安の悪いエリアを超えた先にあるStrathconaというエリアにあった。

ここは昔バンクーバーの日本人村があったところで、
映画「バンクーバーの朝日」の舞台となった野球場があるエリアである。

しかし、今では若いスタートアップやクリエイティブなエージェンシーが集まる
少しヒップスターなエリアになっていた。

彼らがこのエリアに集まる理由はシンプル。ダウンタウンから近い、家賃が安い、そして昔の工場跡地の感じがクールだからである。

1時間ほど早めにオフィスに着いてしまった私は近くのカフェで時間を潰すことにした。
想定される質問への回答や会社の事業内容を繰り返し確認していた。

しかしすでに緊張していたのか、全く頭に入らない。

そんな私の頭の中に雑念が入り込む。
実は日系企業の求人を蹴ったことが本当に正しかったか、まだよくわからないでいた。

週4日でもいいから、とりあえず働いて資金難をどうにかするのが先決だったのではないか?そんなことを考えていた。

とにかく、今は面接に集中しようと思った。

前回の面接同様、提案書をまとめて準備は万全だった。
これでダメなら、それが私の今の実力だ。

面接の10分前、私は会社のオフィスがある建物の前まで来ていた。
正直、ボロい建物だと思った。

私は会社のブザーを鳴らした。

“This is Aki. I’m here for an interview.”

“What?”

“I’m Akihiro Nomura.”

“What?…. ok, I’ll buzz you in.”

向こうは私が何を言っているかわからないようだった。
断っておくが、このブザーの音質はものすごく悪い。

この一連のやり取りが面接前の私をさらに不安にさせた。

オフィスは2階だ。

エレベータで2階に上がると「ガンッ!」という音とともにエレベータが止まった。
このエレベータは100年前に作られたのではと思うくらいボロかった。

2階に上がると会社のロゴが窓に貼ってあったのですぐにわかった。

しかしチャイムや電話はない。
仕方なく重そうなドアをノックした。

しかし反応はない。

次は強めにノックした。
そうすると、”Yes, come in.”と言われた気がしたので、ドアを開けて中に入った。

中に入ると、予想以上に綺麗にデコレーションがされており驚いた。

私はインタビューに来たと伝えると会議室に通された。
すると、まもなく2人の面接官が中に入って来て挨拶をした。

1人はセールス、1人はCOOであり会社の創業者の1人だった。
2人とも若いことが一目でわかった。

面接が始まると、まずは自己紹介を求められた。

一通り今までの経緯を説明した後、私はある話を切り出した。

「私はそもそも面接が得意ではない。その上、英語もうまく喋ることができない。
でも募集されているポジションの仕事をこなす能力はある。それを証明するために提案書を作ってきた。」

こんな趣旨のことを話した。

「中身を見てもらえれば大体内容がわかると思う。」

私はそう加えた。

あっけにとられた面接官の2人は ”This is impressive. Ok..”といって、あらかじめ用意してきた質問を投げてきた。

質問の要旨は下記だったと記憶している

日本で勤めた会社の事業内容・会社規模
日本で関わったプロジェクトの話
これから継続的に英語を学んでいくつもりはあるか?
ビザの話

これらの質問にうまく応えられた自信はなかった。
しかし、おかまいなしに面接は進んでいく。

最後に給料の希望金額の話になった。

面接準備の段階で給料の金額はものすごく悩んだ。

高すぎても先方の予算に合わないからダメ、低すぎても自分の価値を下げかねないからダメ。ちょうどいいラインより少し高めが理想的。

インターネットの記事にはこんなことが書かれていた。

悩んだ末、私は低い金額を申し出て、こう付け加えた。

「正直、今の私の英語力だとチームの足を引っ張ることになるだろう。だからこの金額でスタートして、私に価値を感じたら給料を上げてほしい。」

この時期の私は最低限の生活ができる収入さえあればよかった。
それよりも重要なのは英語でのプロジェクトの経験を積むことであった。

“Got it.”

向こうはそう応えて面接は終了した。

“We’ll be in touch!”

彼らは帰り際にこう言って、私は帰路についた。

この面接がうまく行ったかどうかは正直この段階ではわからなかった。

前に2度、面接で痛い目をみている。
あまり期待せずに待った方が良いと思い、翌日から変わらずに求人への応募を再開しようと思った。

翌日、いつもと変わらずに図書館に行った。
しかし全く集中できなかった。昨日の面接の事が頭から離れなかったのである。

“We’ll be in touch.”

特にこの言葉が頭から離れなかった。
これは日本語でいうところの「また何かあればご連絡します。」なのでは?と思ったからである。

そうであれば見込みは薄い。「何かある」なんてことは基本的にはないからである。

3日待って連絡が来なければこちらから連絡しよう。
心配事が心配事に輪をかけてグルグル回っていた私の頭の中をなんとか制止した。

そう思った矢先、先方からメールが届いた。

“Just left you a voicemail, please call back at xxx-xxx-xxxx anytime you’re available.”

ボイスメールを確認しようとすると、私のプリペイド携帯の残高がなくなっていた。
急いで携帯ショップに行き、残高を追加することにした。

「ボイスメールを残した・・・これはどっちだ?」
私の頭の中は、このどっちとも取れるメールに困惑していた。

「素晴らしい提案書を作ってくれたが、今回は別の人を雇うことにした。Thank you!」

もしくは

「君を雇いたいと思っている。詳細は折り返して Thank you!」

残高を追加した私は急いで、ボイスメールを確認した。

確認すると…

「折り返し電話をして」

という内容だった・・・。
メールに書かれていた内容の繰り返しに私はガクッときた。

まだどっちに転ぶかはわからない・・・。
とにかく電話しないと答えがわからないことはわかった。

私は最悪の状況を想定して、断られた時の返答を考えた。

雇用条件面に問題があるなら条件を下げてもいい。
英語力に問題があるならそれを短期間で問題のないレベルまで持っていく約束をする。

あらゆる状況に対する返答を用意して電話をかけることにした。

向こうが電話をとった。

まず、もらった電話に対しての折り返しですと伝えた。

向こうは”Yes…”と言い、次に繋げた。

「君を雇いたいと考えている」

私は頭が真っ白になった。確か”Really?”とか言ったと思う。

私は、予想外の状況に困惑しつつ。彼女の話を黙って聞いていた。

しかし電話中、問題があった。
電話ごしの彼女の声が全く聞き取れず、何度も繰り返し聞き直さなければ何を言っているのかわからなかった。

もちろん私の英語力の低さにも問題があるが、安物のプリペイド携帯の音質の悪さにも問題があった。私はこの安物携帯をここまで憎んだことはなかった。

すでに2回も「採用 -> やっぱなし」を経験した私は、
今回の電話で、コミュニケーションに難があると見なされ
採用を取り消しされないか不安になった。

私は電話が終わった後、すぐにフォローアップのメールを送った。

電話で話した内容の確認という名目で、
今回の採用は変わらないことを確認するためのメールだ。

向こうの返信が来るまで、気が気でなかった。

意外にも向こうの返信はすぐ返ってきた。
どうやら気が変わって採用取り消しはなさそうだった。それを見て安心した。

しかも、私の英語のTutoringの費用もサポートしてくれることになったのである。

私は感謝の気持ちしかなかった。
心の底から感謝した。

ここで結果を出せなければ、私の存在価値はゼロだと思った。

次の月曜日から仕事を開始することになり、
私はそれまでにビザの切り替えや諸々の手続きを済ませないといけなくなった。

「来週からはいよいよ、仕事復帰か・・・。」

永遠のように感じたこれまでの4ヶ月が終わり、次の人生のフェーズに進むのであった。

(就職活動編おわり。仕事編につづく)

Lesson Learned #13: 面接時の提案とこれから海外就職を考える方にひとこと

面接に自信がない場合は何か自分の能力を示せるものを準備することをおすすめします。

レジュメ(履歴書)、ポートフォリオ(過去の成果・実績)を用意するのはもちろん、その会社で働いて『何ができるか』を提示する事で、相手も具体的なイメージができるようになります。

これは、営業などクライアントに何か提案する仕事を経験したことがある人はイメージできると思いますが

「うちの商品はこれです。スペックはこれです。買ってください。」

と言うのと、

「うちの商品はこれです。スペックはこれです。御社の場合は、_____を_______という使い方をすることで、______程度のリターンが得られます。」

と言うのでは刺さり方が全く違います。

私はその会社に入って『何ができるか』を提示するために提案書を作りました。

提案を作るにあたって、面接を受ける会社のウェブサイト、ソーシャルメディアのアクティビティのチェックはもちろん、競合サイトのリストアップ・分析を行い、競合サイトに勝つための施策は何か?また、その中で私が何ができるか?をまとめました。

提案を作る際に、入手できる情報は限られていますが
限られた中でも最善をつくす事で、それが相手に伝わります。

マーケターとして現地企業に就職しようとした時、『コミュニケーション能力』や『ビザ』、そして『現地の感覚』の不足など、あらゆる面で不利です。特にビザはどうしようもない問題です。

「それらを補うために、一体何ができるか」という視点で面接に臨むことが非常に重要です。

どれだけ日本で一流の企業に入って結果を残したとしても、それが伝わらなければ意味がありません。
もし、それが準備でカバーできるのであれば、それはやるべきだと思いますし、その熱意が相手に伝わりポジティブな結果を招きます。

参考までに以下、CEOに私を雇った理由を尋ねた際に直接貰ったメッセージを記載します。

I can’t speak for others on the team but I wouldn’t be surprised if they felt similarly. I would say that when we first hired you it was because you left a very good impression in your first interview. I remember Matt and Tyler (Note: Interviewers) mentioned that you went above and beyond. They said you made up for the language barrier by showing the effort you would put in. For SEO and PPC, it is inadvisable to hire someone that doesn’t share the native tongue of your country. But we felt that we were willing to take the risk because you put so much effort into the job and that you were willing to work hard for it.

意訳すると「SEOとPPC広告運用のポジション(私が採用されたポジション)のことを考えると、英語ネイティブを雇った方が良いのは明らかだったけど、私の姿勢を見て多少のリスクを取ってでも私を採用する価値があると感じた」と言ってもらえました。

当時の私は他の候補者と比べてズバ抜けてスキルが高いわけではなかったそうです。結局人を雇うのは人です。
スキルや英語力が足りないなら、熱意でカバーというのも一つの選択肢かもしれません。

そして最後にお伝えしたいのが、『現地で就職できるかどうかは運にもよる』ということです。

私と全く同じアプローチで就職活動をしたところで、正直うまくいくかはわかりません。バンクーバーではマーケティング職は人気です。バンクーバー現地のトップの大学を出た学生たちでも、卒業後インターンシップで経験を積んで、フルタイムのポジションに就こうと必死です。

また、無事就職できたとしても、悪い会社に当たることもあります。バンクーバーには若い会社が多く、職場環境が整っていないところも少なくありません。

しかし、そんなこと言ってても始まらないのでとにかく行動してください。

やると決めたら、とりあえず諦めずにやり続ける。
やり続けていれば、自然と行動量が増える。
行動量が増えれば、運が味方する確率も上がる。
そして、それが最終的に成功率アップに繋がります。

Never give up!

[その他のストーリー]
第0話: カナダのマーケター海外就職ストーリー
第1話: カナダ渡航と立ちはだかる壁
第2話: 目標額170万円、地獄のフリーランス体験
第3話: カナダ渡航1ヶ月前、英語学習の開始と思わぬ見落とし
第4話: カナダ到着。不安だらけの1日
第5話: 学校生活初日。長い4ヶ月の始まり。
第6話: 26歳の実践日常英語学習法 [海外ドラマ活用]
第7話: 学校生活、苛立ち、次なるステップ
第8話: ホームステイからの脱出、ルームシェアと恐怖の夜
第9話: ボランティア活動への挑戦、意気込みと現実
第10話: ワークショップへの参加、資金不足、フリーランスへの道
第11話: 就職活動、図書館、不安と希望の光
第12話: 折れそうな気持ち、迷走、出した結論

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