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GAFAがニューヨークのハドソンヤード地区にて2万人雇用予定。背景には働き手の趣向の変化があった? – Ep. 11

GAFAがニューヨークのハドソンヤード地区にて2万人雇用予定。背景には働き手の趣向の変化があった? – Ep. 11

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今回はコラボPodcast第二弾。

Google, Amazon, FacebookなどのGAFAがニューヨークのハドソンヤード地区に相次いでオフィスを拡充する予定というニュースについて、Whitebox CRE Solutionsの茂木さんにお話を伺いました。

茂木さんはマンハッタンの米系商業不動産ファーム、Vicus Partners (ヴァイカスパートナーズ)の日系ビジネスディレクターとして活動、ニューヨークでこれまで数々の不動産紹介を手がけた実績をお持ちです。また、Jetroなどに登壇するなど、精力的に情報発信に取り組まれております。

「なぜ、今ニューヨークなのか?」
「なぜハドソンヤード地区なのか?」

これらの答えの背景を探っていくと、働き手の趣向の変化がありました。

Speaker: 茂木 美紀

Whitebox CRE Solutionsの代表 & Vicus Partnersの日系マーケット・ダイレクター。
日本で国際会議・イベント運営会社勤務後ニューヨークへ渡る。ニューヨークでは、全日空ニューヨーク支店で予算とプロモーションを担当した後、日本政府観光局(JNTOニューヨークオフィスで、国際会議誘致のリーダーとして、日本の国際会議都市を北米アメリカの各種組織のトップにプロモーションをかける。2011年からの三年半は、東京で人材教育コンサルタントのビジネス開拓を担当。外資企業トップと現地社員の意識のギャップなどについて話を聞き、異文化コミュニケーションの重要性を再認識するきっかけとなる。これらの経験と異文化マーケティングとコミュニケーションの知識を、商業不動産でもフルに活用し、クライアントの声に耳を傾け、ニュアンスを汲み取り、適した空間と、リース契約の交渉を行う。ブルックリン美術館近くのブラウンストーンに、ティーンエージャー二人と夫、そして愛犬ブルックリンと暮らす。

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ニューヨークの「産業・街の多様性」が大きな魅力に

茂木さん:
ニューヨークでは、GAFAが2020年までに約2万人の雇用するだろうと言われています。

マクロ的な視点から言うと、今まで伝統的なニューヨークの産業は金融でした。
ただし数年前から、ニューヨークの NYCEDC(New York City Economic Development Corporation) という団体がテック系の雇用の創生に力を入れていて、それに伴って、スタートアップの数も増えてきました。


参照: NYCEDCのウェブサイト

GAFAからすると、これだけスタートアップが多く、さらに大学も多い環境で、北米1位、2位を争う大都市であるニューヨークにオフィスを増やす意味は大きいと考えているのでしょう。初めはセールスオフィスだけだったのが、今ではさらにテック系の部署も置くという話もあります。

そもそもニューヨークは西海岸と比べて産業がとても多いです。もちろん金融が有名ですが、そこにメディア、ファッション、広告などの産業もあります。
こういった様々な企業活動が行われているのもニューヨークの魅力であると思います。

今の世代の方々は積極的にコミュニーケーションを取って、「コラボレーションで新しいものを生み出していく」といった世代だと思います。
そういう意味で、オフィスの環境だけでなく、街自体に人種、産業の多様性があるという魅力も大きいのかなと思います。

今まで手を付けられていなかったハドソンヤードの土地開発が大きな転機に

茂木さん:
土地開発で言うと、ハドソンヤード (Hudson Yards)のオフィスビルの開発が終わり、周辺の開発も今ものすごいピッチで進んでいます。規模の大きい、新しい環境を提供できる開発が進んでいるというのがひとつの魅力だと思います。


参照: Googleマップ – ハドソンヤードの位置

野村:
この時期にハドソンヤードの開発が進んできた背景はどこにあるのでしょうか?

茂木さん:
ハドソンヤードには、もともと広大な土地がありました。
大規模な開発が出来る土地があったというのが一番の理由かと思います。

野村:
ハドソンヤードは、もともと全く開発が進んでいなかったのですか?

茂木さん:
何もなかったですね。
9th Avenueより西は、用事がなかったら行かないエリアです。


参照: Googleマップ – ハドソンヤードの位置は9th Avenueの西側。

野村:
そういった土地に手をつけていなかったというのは意外ですね。

茂木さん:
広大な土地なので開発にすごい時間がかかっていたのだと思います。

例えばブルックリンのネイビーヤードやインダストリーシティなど、既にあった建物を使ったものは、もっと開発スピードは早いです。
それに対してゼロから新しいものを作る開発にはかなり時間がかかっていたということです。


参照: ネイビーヤードのプロモーションビデオ。過去の施設をうまく活用していることがわかる


参照: インダストリーシティのプロモーションビデオ。インダストリーシティの詳細は前回のインタビューを参照

ハドソンヤードに行くと感じると思いますが、ハドソンヤード自体が街となっています。
オフィス、レジデンスビル、シアターもあります。文化の発信もあり、同時にそこで働くことが出来る一つの街になっています。
またハイラインという昔の路線を使った公園があり、そこは観光客にも人気です。
そういった新しいものの中に、自然を取り入れたり、オフィスだけではなくていろんな側面を持っている多様性が企業にとっても魅力的だと思います。

若い世代の「働く場所」に対する意識の変化

茂木さん:
今までは働くエリアはここ、遊ぶエリアはここというのが決まっているのがニューヨークだったと思います。
ただそこからまずスタートアップがマンハッタンのミッドタウンではなく、さらに南のシリコンアリー(Silicon Alley)に移っていきました。


参照: Googleマップ – Silicon Alleyと呼ばれる Flatiron地区はミッドタウンから南側に位置する。

こういった動きから、さらにハドソンヤードのような文化を持った街が開発されて、なおかつ面積も大きく取れるということで、これからさらに増床しようとしているGAFAにとっては、こういったエリアは理想的なのではないかなと思います。

野村:
若い世代に、働く場所は都心でなくてもいいという風潮が生まれ、徐々に人々が動いていき、その動きに合わせてデベロッパー側も、ハドソンヤードなど、今まで目を付けられていなかったエリアにオフィスビルを立てれば需要が出てくるのではと考えた。そういった全体的な流れがあって、今回の開発の話に繋がったというわけですか?

茂木さん:
ハドソンヤードに関してはその通りだと思います。
ただその周辺地域も今すごい勢いで開発が進んでいます。
例えば50歳以上の世代の方は、「どうしてあのエリアがいいのか」と不思議がってる人もいますね。

野村:
長く住んでいればいる人ほど固定概念が生まれてしまうのでしょうか?「何故あの何もないハドソンヤードに人々が移っていくのか」というふうに思っている人も多いかもしれませんね。

茂木さん:
そういう人はやっぱりいますね。
ミッドタウンの 6th Avenueや マディソン (Madison) Avenueの辺りが綺麗で、栄えていると考える世代だと思います。

野村:
ニューヨークを題材とした映画もその辺りが多いですよね。

茂木さん:
そうですよね。ただその図式が若い世代にとっては魅力的ではなかったんでしょうね。

日本だと開発の中に、レジデンシャルとオフィスが一緒に入るというのは珍しくないことだと思います。例えばミッドタウンや六本木ヒルズにはレジデンシャルもありますよね。そういったものがニューヨークには今まであまりありませんでした。

それが今ハドソンヤードやその隣のマンハッタンウェストという開発エリアでは オフィスもあり、レジデンシャルもホテルもあって、さらにリテールもあるという総合的な開発が進んでいます。
これはニューヨークにとって新しく、意外に日本の方がこの面では先に行ってたという考え方もできるかもしれませんね。

ただハドソンヤードの開発を見ていて思うのが、全てが目新しいものではないということです。
リテールが入っていたり、高級ブランドが入ったりしているのは、従来のモールのような作りとなっています。
ハドソンヤードのエリアをモールとは呼びませんが、まったく目新しいものではなくて、従来のモールの概念がここでも使われているのかなと思います。

あとはニューヨークの人には、郊外に電車を使って通勤するという概念があまりないかなと思いますね。
ブルックリンやクイーンズであれば地下鉄を使って通勤ができますが、郊外となるとコミュータートレインと呼ばれる通勤電車が必要になります。
ただ日本のように5分に1本来るようなものではなく、夜になるとかなり本数が減ります。そうするとお仕事終わりや、遊びにいった帰りに30分待たないといけないようなことがあり、困るんですよね。

そういう意味で、若い世代が街の魅力の変化を感じ取っているのかなという風に思いますね。だからブルックリンにも人が移ってきたという背景がありますね。

コワーキングを始め、ニューヨークへの進出方法は増えて来ている?

茂木さん:
最近ウォールストリートの記事で、イギリスのフィンテック(Fintech)のスタートアップの会社についてすごく面白い話が取り上げられていました。
その会社がニューヨークに進出した際の話なのですが、やはりニューヨークと言うと地価が高いので初めはテキサス州のオースティンなど他の州に、オフィスを構えようと考えていたようです。

ただし人材のこと、そして業態がフィンテックということもあって、ニューヨークから人材を連れてこないといけないということになったようです。
それであれば最初からニューヨークにオフィスを構えた方がいいのではないかということでブルックリンにオフィスを構えたという話でした。

野村:
ニューヨーク近郊で比較的安めのにオフィスを構えるというオプションが増えてきているのでしょうか?

茂木さん:
コワーキングスペースが多いので、進出しやすいのかなと思います。
WeWorkもニューヨークから出た会社ですしね。

コワーキングスペースの良さは契約書が2ページぐらいで手軽ですし、家具もWifiもすでにセットされているところです。コミュニティもあるので、居心地がいいのかなとは思いますね。

またブルックリンに行けば地価が下がりますし、街自体もオフィスを増やそうとしているので 選択肢は増えてきていると思います。

もう1つサブリースを利用するのも良いと思います。

例えばオフィスを10年間リースの契約をして、5年間が経過したとします。
このオフィスが狭くなった、もしくは大きすぎるから出たいといった場合にそれを又貸しすることをサブリースと言います。

野村:
引き継げると言うことですか?

茂木さん:
そうですねレントを引き継ぐということです。そういった新しい手段もあります。

そこにはすでに家具が入っている場合もあるので、それを利用すれば、新しいオフィスを構えるよりは安く抑えることができるかなと思います。

今後のニューヨークの展望

野村:
GAFAを始めテック企業がニューヨークに入って来ているという中で、今後どのように変化していくのか、予測があれば教えていただければと思います

茂木さん:
あくまで私の観測ですが 、住宅のレントも地価も上がっていくだろうなというのがあります。
心配するのはやはりサンフランシスコのようになることです。ホームレスの数が増えなければいいなと思います。
一方で大手のテック系の増床が増えていくということで、スタートアップにとってさらに魅力的な街になるのかなとは思いますね。

テック系を目指す人が、西海岸の他にも選択肢が出来るということになりそうです。

野村:
ありがとうございます。

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