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ニューヨークに進出する飲食店が知っておくべき訴訟事例4選と対策

ニューヨークに進出する飲食店が知っておくべき訴訟事例4選と対策

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今回はニューヨークでホスピタリティー業界に特化した法律サービスを提供する Kawasaki Law Officeの代表弁護士の川崎さんにインタビューさせていただきました。

今回のインタビューでは、「ニューヨークに進出する飲食店が知っておくべき訴訟事例4選と対策」と「NYで居酒屋・バーを開く際に知っておくべき、Certificate of Occupancyの条件」ご紹介していきます。

Profile:

Shimpei Kawasaki: Florida Coastal School of Lawにて法務博士号を取得しニューヨークでトップの法律事務所に勤めた後、Helbraun & Levey (ヘルブラン & リービー) LLPにて本格的にホスピタリティ関連法務の経験を積み、その後自身の法律事務所 Kawasaki Law Officeを開業。
法律部門での経験だけではなく、焼き鳥、居酒屋、懐石、オイスターバー、ハンバーガー、ステーキハウスなどのレストラン立ち上げの経験も持ち、ホスピタリティー業界の内情に詳しい弁護士。

「ニューヨークに進出する飲食店が知っておくべき訴訟事例4選と対策」

ニューヨークで居酒屋・バーを開業する際に知っておくべき Certificate of Occupancyの条件

ニューヨークに進出する飲食店が知っておくべき訴訟事例4選と対策

野村:
まずアメリカではそもそも訴訟が多いという話を聞くのですが、どのくらい多いのでしょうか?

川崎さん
アメリカ全体の頻度でいうと毎日起こっていますね。
弊社に来る日系企業のお客さんだけでいっても、1ヶ月に1回は必ず相談がありますね。

訴訟にあってしまうと、莫大な費用がかかりますので、できるだけ示談にしようとしています。
その金額は5,000ドル(約55万円)で済むこともありますし、10万ドル(約1100万円)までいってしまうこともあります。

野村:
そういった示談金目当てでに訴訟を起こす人も多いですか?

川崎さん
多いですね。何度も訴訟を起こしているような従業員もいます。

そういう方がレストランを転々として、行き着いたところでまた問題を起こして、解雇されるというケースが多いです。
先ほどお話しした通り、基本的には示談で解決するようにするのですが、示談になると、記録に残らないので、問題がある従業員かどうか事前に判断するのが難しいです。

野村:
何か店側でできる対策はありますか?

川崎さん
全て書類に残して後で提出できるようにしておくことですね。いわゆるPaper Trailと言われるものです。

野村:
例えば従業員に不当解雇だと言われた時に、「この時に欠勤して、こういう問題があった」というのが書いてあると良いということですか?

川崎さん
そうですね。
遅刻が多いとか、他の従業員とコミュニケーションが取れないなどの問題を書類で残しておくことが大切です。そうすれば、解雇が不当解雇ではないことを証明する材料になります。

野村:
それではここからは実際の4つの訴訟事例をご紹介頂きたいと思います。

American Disability Act (ADA)を悪用したケース

川崎さん
今多いのがADA(American Disability Act)という障害者を守る法律を悪用するケースです。
悪い弁護士がADAを悪用して、たびたび訴訟を起こしているケースをよく聞きます。

例えば車椅子の人がレストランに入れない作りになっていたり、障害者の方が使えるトイレがなかったり、ウェブサイトが視覚障害の方向けに作られていないと、ADAに違反することになるので、訴訟になってしまいます。

野村:
視覚障害の場合、ウェブサイトの読み上げができないとダメということですね。

川崎さん
そうですね。
ADAは判例が少なく法律もクリアではないので、皆さん示談をすることに必死になっているのが実情です。

野村:
日本の会社ができる対策はどういうことがありますか?

川崎さん
やはり建築家や弁護士と相談して、事前にADAに違反していないかを確認し、未然に防ぐことが重要だと思います。

チップの取り扱いを誤って訴訟されるケース

川崎さん
次にチップの取り扱いに関する問題です。
チップの制度を少しでも間違えてしまいますと、窃盗という容疑で逮捕されるケースもありますので、注意した方がいいですね。

野村:
チップを経営者が取ってしまうと、窃盗罪になるということでしょうか?

川崎さん
そうですね。
経営者とマネージャーはチップを取ってはいけないことになっています。
チップは従業員のものであって、マネージメント、雇用者のものではないということになっているので、経営者やマネージャーが取ってしまうと訴訟の対象になります。

野村:
店によっては、一旦チップを経営者側でまとめて、後でその時間帯で働いていた従業員で分配するするという話を聞きますが、これは問題ないですか?

川崎さん
そうですね、それは問題ないです。
ただ、ニューヨークはチップが当たり前の街なので、優秀な従業員が店に定着しないという問題があります。

野村:
チップをもらえないからマネージャーになりたがらないというのをよく耳にします。

川崎さん
そういう話もありますね。

野村:
また他にも、そもそもチップを導入しないという話も聞きますが、それは問題ないのでしょうか。

川崎さん
チップを導入しないということを契約書に入れることは問題ないですが、やはり、従業員のモチベーションにも影響して来るので、マネージメントが大変になるリスクがありますね。

シフトチェンジの際の事前通知を怠って訴訟されるケース

野村:
次の訴訟事例としてシフトチェンジの事前通知を巡っての訴訟とありますが、これはどのようなケースがありますか?

川崎さん
シフトを変更するにあたって、事前に従業員に連絡をしないと違法になってしまうので、注意する必要があります。
原則、2週間前に従業員にシフトを渡して、もし変更がある場合は72時間前に通知することとなっています。

もしも急に来れなくなった従業員の穴埋めをしようとすると、シフトを代わってもらった従業員に対して、それに見合った給料を支払わなければいけないこととなっています。

野村:
例えば、体調崩した従業員がいて、その連絡が24時間前であった場合、
シフトを代わってくれた従業員には、上乗せで給料を支払えば問題ないということですか?

川崎さん
そういうことになります。

冗談で言った差別発言で訴訟されるケース

野村:
最後に差別用語による事例ということですが、具体的に教えていただけますか。

川崎さん
冗談で使った言葉が差別用語と判断され、訴訟になったケースがあります。

従業員との距離が近すぎると、冗談で言ったひとことが差別用語と言われる危険があるので気をつけなければいけません。
そのため、従業員とマネージメントメンバーは少し距離感を置かせた方がいいかなと思いますね。

野村:
どのラインまではokという具体的な線引きはありますか?

川崎さん
その線引きはとても難しいですね。

基本的に差別の案件は示談のケースが多いです。問題ない発言であったと思っても、訴訟を起こされてしまえば、まずは示談を考えるケースが多いです。

また意図的に差別的なことを言わせようとする従業員もいるので、そういった悪意をもった従業員をうまくピンポイントで見つけることが大切になりますね。

野村:
このような話を聞いてると、身近にすぐに相談できる弁護士の存在が必要だと感じます。

川崎さん
そうですね。
規模の小さなレストランであれば、顧問弁護士を雇うほどでもないかもしれませんが、弁護士といい関係を作って、いつでも連絡が取れる体制を取っておいた方がいいかなと思います。

規模の大きいチェーンやフランチャイズの店だと、顧問弁護士が必要になりますね。
しっかりと月々の顧問弁護士費用を払って、常に相談できる体制を整えておいた方がいいかと思います。

私はニューヨークでの法人設立など、初期の段階から依頼主のビジネスに関わるようにしているので、なにかあったらすぐ連絡してくれと伝えています。
また解雇の仕方など、一般的な法律に関する質問であれば、費用なしで回答しています。

ニューヨークで居酒屋・バーを開業する際に知っておくべき Certificate of Occupancyの条件

野村:
ニューヨークで居酒屋・バーを営業する際に必要なリカーライセンスですが、リカーを提供する場合とそうでない場合の Certificate of Occupancy (建物使用許可証)が異なるということですね。こちらのお話を具体的に伺っていきたいと思います。

川崎さん
最近よく問題になっているのが、Certificate of Occupancyをよく理解しないで物件を契約してしまい、後々になってリカーライセンスが取れない物件だと判明するケースです。

このケースが増えて来ているので、依頼人の方には気をつけてくださいと伝えています。

この使用許可証ですが、レストランの営業ができる使用許可証とリカーライセンスが取れる使用許可証には少し違いがあるので、レストランとして使用できるが、リカーライセンスは取れないという許可証もあります。
そこの違いをしっかりと理解する必要がありますね。

基本的にニューヨークでは、教会や学校の200フィート以内の建物でリカーライセンスを取得することが出来ません。
教会と学校ができる前からある建物の場合は問題ありませんが、基本的にはこれらの建物から200フィート以内ではハードリカーを提供するバーやレストランは設置してはいけないというルールがあります。

また500フィートルールといって、500フィート以内にハードリカーを提供するお店が3つ以上存在してはいけないというルールもあります。

ただし、ニューヨーク市には至る所にバーがあるので、500フィートルールを厳密に守る事は厳しいです。
実際にはニューヨーク酒類管理局と交渉が必要になってきますね。ただ、バーが密集しているエリアですと新規のリカーライセンスの取得はかなり難しくなっていると感じます。

他の手段としては、すでにリカーライセンスがある場所に居抜きの状態で入り込むという方法もあります。居抜きであれば、既に存在しているライセンスなので上記の200フィートルールや500フィートルールは関係ありません。

野村:
新規でライセンスをとるパターンと居抜きで入るパターンは、どのくらいの割合ですか?また費用や期間の違いはありますか?

川崎さん
弊社で受け持っているお客さんの場合は、新規が多いですね。
居抜きの場合であっても、仮免許が発行されるだけであって、そのまま元の免許を受け継ぐことはできません。原則、会社が変わるたびに新規で申請する必要があります。

費用の面で言うと、基本的にハードリカーの場合、4320ドルの申請料がかかります。
居抜きの場合は、そこに仮免許申請の追加費用がかかることになるので、居抜きの方が費用がかかります。

期間の差で言いますと、居抜きの場合は30日以内に仮免許が発行されるので、すぐ営業開始することができます。
これに対して、新規の場合は申請のため、6~7ヶ月待つ必要がありますね。

野村:
不動産の方は基本的にはそういう知識があると思っていていいでしょうか?

川崎さん
実はそのような知識を持ってない不動産屋も多く存在しています。不動産弁護士でも理解していない人が多いのが実態です。

繰り返しになりますが、事前に取得予定の物件はリカーライセンスの申請が可能なのかチェックしてもらうことはとても重要です。それを怠ると、申請に遅れが出てしまいます。事前チェックを怠って、後々になってカーライセンスが取れなかったというケースは本当に多いですね。

そんなこともあって、付き合いのある不動産の方には、新しい依頼人の方が来て、Certificate of Occupancyについて知りたいと言うことがあれば、すぐに連絡してもらうようにしています。リカーライセンスの申請可否に関する質問であれば基本的に無料で回答しています。

野村:
その場合、みなさんどうされるのでしょうか。
すべて最初からやり直しするのですか?

川崎さん
そうですね。

リカーライセンスの知識のない弁護士が不動産を決めて、後々リカーライセンスがとれないことがわかり、弁護士を変えたいという連絡がくるケースが多いですね。
その場合すべて一からやり直しとなります。

野村:
費用も二重にかかってしまうということですか?

川崎さん
そうですね。再交渉という形になります。

また他のケースで、免許が取れない段階で、BYOB(Bring Your Own Bottle)と言ってお客さんにお酒の持ち込みを許可して営業しているお店もあるのですが、それも違法なので、発見されてしまうと検事、民事訴訟になってしまいます。

今後ニューヨークに進出を考えている飲食業の方へのアドバイス

川崎さん
ニューヨークのリカーライセンスは日本と全く違いますので、来る前に少し勉強して頂くことですね。
ニューヨークで法律の知識を持たないでビジネスをすることはとても怖いことなので、弁護士に頼らず、自分でも雇用関連の法律を勉強するなど、知識を持つことが大切かなとおもいます。

まとめ

今回のインタビューでは、ニューヨークに進出する飲食店が知っておくべき訴訟事例とCertificate of Occupancyについてお話をお伺いしました。日本ではあまり身近ではないチップや差別問題に関する訴訟など具体的な事例を紹介頂き、またニューヨークにいる人でもあまり理解できていないリカーライセンスについて簡潔にまとめて頂きました。これからニューヨーク進出を検討している飲食業界の方には、非常に参考になるお話であったと思います。貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。

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