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カナダの商用量子コンピューター企業 D-Waveの量子コンピューティングビジネス活用事例

カナダの商用量子コンピューター企業 D-Waveの量子コンピューティングビジネス活用事例

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「カナダにおける量子テクノロジーの最新情報」というテーマで、カナダ大使館主宰のウェビナーが開催されました。

その2日目として、カナダの西海岸の都市、バンクーバーに拠点を置く、量子コンピューティングのD-Waveから、「量子コンピューターのビジネス活用事例」の紹介がありました。

D-Waveは1999年に設立され、世界初の「商用量子コンピューター」を開発した会社です。
海外のメディアはもちろん、日本のメディアにも取り上げられる量子コンピューター界隈で注目を集める企業です。

本記事ではウェビナーの要旨をまとめましたので、ご参照いただけると幸いです。

量子コンピューターを通して実現できること

Presenter:

Murray Thom, VP of Software and Cloud Services, D-Wave

 

ウェビナーでは従来のスーパーコンピューターと量子コンピューターの違いが説明されました。

これまでのコンピューターは Sequential (順次的)、つまり最適解を探すまでに一つ一つ手順・ステップを踏んで答えを探します。

そのため、変数の多い問題に対しては時間がかかりすぎる、もしくはそもそも従来のコンピューターでは解決できないという課題がありました。

一方で量子コンピューターは、並列的にデータを処理することができます。
従来のコンピューターと比較して、大量の変数が入り混じるような複雑な問題解決をより早く、低エネルギーで実現することができます。また、量子力学の専門家でなくても使えるというメリットもあります。

これにより、これまで実現不可能とされていた物事の最適化が実現できるようになりました。

実際に、Fortune 5000の会社のExecutiveを対象に行った調査(n=451)によると、「31%が以前に実現を諦めた複雑なビジネス課題が存在する」と回答しています。

また同調査によると、今後量子コンピューターの活用に意欲的であることがわかります。

  • 81%の会社がこれから3年の間に量子コンピューターを使う予定がある
  • 39%はすでに量子コンピューティングを実験している
  • 主な目的は競合との差別化
  • 効率化を期待している

量子コンピューター市場拡大と取り組み

これらの流れを受けて、カナダでは量子コンピューティングに力を入れています。

具体的な取り組みの一例として、以下があります。

  • University of Torontoのビジネススクールの新規ビジネスを生み出すプログラムがあり、その中で量子コンピューターを使ってビジネスを生み出すプログラムが存在する。量子コンピューターをどのようにビジネスに活用し、実際の投資家に会い、どのようにプロダクトのピッチをするかを学ぶ。
  • カナダのBC州にはCanadian Digital Technology Superclusuterという組織がある。800以上の会員企業を抱え、新たなプロダクトのポテンシャルを見出すために大学のリサーチャーとタッグを組んで、機械学習のような量子コンピューターを使った技術活用を検討している。
  • Simon Fraser UniversityのBC州のSurreyキャンパスにて、Quantum Algorithm Instituteという組織がある。学生やテクニカルデベロッパーにどのように量子コンピューターを活用するかを教えている。
  • Institute for Quantum Computingという組織。量子情報サイエンスから新たな量子デバイスを生み出す。投資家機関と結びつけて、商業化を目指す

 

また、上記以外にもD-Wave主催のQubitsというユーザのグループカンファレンスがあり、量子コンピューティングのビジネス活用の普及に取り組んでいます。

 

現在では、ビジネスでの活用も進み、15,000以上の開発者がいます。

また、Accentureのような会社も、クライアントのニーズにこたえるために会社内で量子コンピューターに関するトレーニングを実施。クラウドサービスのAWSも Amazon Bracket という量子コンピュータが使えるサービスの提供開始しており、実用化が加速しています。

 

量子コンピューターのビジネス適用事例

1. フォルクスワーゲン

イベントの送迎バスの最適なルートの変更を量子コンピューターを使ってリアルタイムで実行。

リアルタイムのトラフィック情報を取得して、バンクーバーにいる量子コンピューターにて最適なルートを算出。
そのデータをバスのルーティングシステムに送信。各バスに備え付けられたタブレットにルートを反映し、最適なルート変更を支援しました。

事例詳細 | 事例詳細(英語)

2. Menten AI

Menten AI はタンパク質設計のパイオニア。タンパク質の構造を決める際に、量子コンピューターを活用。
既存のタンパク質に変化を加えるのではなく、量子コンピューターを使って全く新しいプロテインを設計しています。新型コロナのライブテストにも使用されました。

3. Save on Foods

Save on Foods はカナダの西海岸にある中規模のスーパーマーケットのチェーン。

運営オペレーションの最適化のために量子アルゴリズムを活用。現在はパイロット版が進行中です。

各スーパーには薬局部門やコーヒーショップ、酒屋などオペレーションが複雑。
店舗によっては、吹雪がふくなど天気など外部要因にも作用されます。

およそ400万もの変数が存在する中、既存の方法では意思決定に膨大な時間がかかっていました。

量子アルゴリズムを導入することで、重要な最適化タスクにかかる時間を毎週25時間かかっていたものを2分でできるようになりました。

4. Denso

商品輸送のルーティングの最適化

事例詳細

5. Toyota Central R&D Labs

交通渋滞緩和のための信号機の最適化。
これまで、近くの交差点の信号の情報をもとに制御する (local control methods)を行っていたが、
各信号機を最適化する際に他の全ての信号機の情報・トラフィックの情報を加味する方法 (global control methods)への移行

事例詳細 | 事例詳細(英語)

6. Sigma-i

ニューノーマルの仕事のスケジュールやサプライヤーのルーティング最適化など。

事例詳細

7. Recruit

テレビコマーシャル配信の最適化

事例詳細

まとめ

今回は量子コンピューティングビジネス活用事例をご紹介しました。

量子コンピューターはニュースなどで触れる機会はあるものの、
個人的には既に具体的なビジネスの活用事例が出てきていることに驚きました。

本記事が少しでも具体的なイメージを掴むきっかけになれば幸いです。

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