今回はカナダ・バンクーバーにて保育留学をサポートされているCOSのShimada Harukaさんにインタビューさせていただきました。
未経験からカナダで保育士資格を取得するまでの話や実際に働いてみたからこそわかるカナダでの保育学校の仕組みについてお話を伺いました。
「同僚の保育士はどういう人なのか?」
「保護者との関係や残業など、労働環境はどうだったのか? 」
気になる方はぜひチェックしてください。
Haruka Shimada : 日本生命保険会社にて事務を経験した後、2013年ワーキングホリデービザを使ってカナダに渡航。バンクーバーの語学学校に通い、レストランでの勤務を経験しながら英語を学ぶ。帰国前に受けたTESOL、J-Shineで初めて海外の保育に触れる。1年後カナダに再び渡航しBC州の保育士資格を取得、その後は保育士として3年間働きつつ永住権を取得。現在はCOSカナダ留学サポートデスクで保育留学アドバイザーとして活躍。
「保育未経験からカナダで保育士になるまで | COSのHarukaさんインタビュー前編」
「カナダで保育!バンクーバーの保育園の実情 | COSのHarukaさんインタビュー後編」
目次
保育未経験からカナダで保育士になるまで
保育士を目指した理由とは?
野村:
なぜ保育士を目指されたのですか?
Harukaさん:
私の中での「日本での保育士」と言うと、「給料が良くない」「休みが取れない」「残業が多い」というイメージがあり、「子供が好き」という理由だけでは難しい仕事だなと思っていました。
ワーキングホリデーでカナダにいる間は、英語教師を目指していました。そのための資格である「TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)」「J-Shine(小学校英語指導者認定協議会)」を取得する中で、カナダの保育園でボランティアをすることになったんです。
その時に日本の保育士と全く違った環境や働き方を目の当たりにして「いいな!」と思ったんです。カナダで保育士になろうと決意しました。
未経験から保育士になるまでに大変だったことは?
野村:
未経験から勉強して保育士になるまでに大変だったことはありますか?
Harukaさん:
保育の勉強というより英語自体が大変でした。英語をとにかく伸ばしたかったので、日本人が少ないChilliwack (チリワック)という街のキャンパスを選んだんです。
クラスメイトはネイティブで、先生の話すスピードも早いし、私が留学生だから気を遣ってくれるという事もなかったですね。
野村:
授業についていくために取り組んだ事はありますか?
Harukaさん:
最初は「分からない単語を全て調べる」という事に取り組んだのですが、量が多くて追いつきませんでした。単語を全部調べるのを止めて、文章全体の意味を何となく汲み取るようにしたら、だんだん慣れてきましたね。
分からなかったらクラスメートやホームステイ先のホストマザーにも助けてもらいました。
野村:
全体像を理解するイメージですね。
Harukaさん:
はい。知らない単語もたくさん出てきたので大変でしたが、保育の勉強という面で言うと授業自体は楽しくて頭に入りやすかったです。
Music&Movementという歌って踊るというテーマの授業や、Scienceなどの授業もありました。Scienceは日本の中学高校で習うようなものではなく、子供達に科学に興味を持ってもらうための内容です。
これとこれを混ぜたら爆発する!とか。笑
野村:
面白そうですね。
Harukaさん:
今振り返ると実践的に学べるようにカリキュラムが組まれていたと思います。
授業の中には「子供達を観察する」という課題があったのですが、実際に自分でデイケアにアポとって見学に行く機会が何回かありました。
これから働くフィールドを実際に見ることができて良かったですね。色々なデイケアを訪れて、それぞれの個性についても知ることが出来ました。
そこで働いている人と会ったり、授業の一環としてサークルタイムを担当する事もありましたね。
そして「このデイケア好きだな」という所が見つかったらプラクティカム(実習)の場所として選ぶことができるんです。
保育士資格を取るための試験とは
野村:
保育士資格のための試験があるのですか?
Harukaさん:
資格試験は無いです。コースの中で試験がある科目もありますが、資格取得のための試験ではないです。
野村:
科目ごとに小テストのようなものがあるというイメージですね。ちなみにテストはどうでした?
Harukaさん:
テストは範囲が決まっていて、ポイントを絞って対策できるので、そこまで難しくはないです。
私の場合は、自分の言葉で説明しないといけないエッセイに苦労しましたね。
野村:
どんなテーマでエッセイを書くんですか?
Harukaさん:
教育方針を自分の言葉で説明するエッセイです。教育方針というものが何種類があって、それを授業で習うんですね。
考え方自体は理解していても、それを英語で説明するとなると難しかったですね。
野村:
エッセイの採点は書く内容の評価がメインですか?文法や語彙も細かく見られますか?
Harukaさん:
先生次第ですね。私の学校の場合は、周りがネイティブだけという事もあり文法などは細かく見ていなかったと思います。
教育方針を正しく理解しているかで採点されているようでした。
野村:
純粋な英語のライティング力で評価されるわけではないんですね。
カナダで保育!バンクーバーの保育園の実情
野村:
ここから、実際にカナダの保育園で働いていた時の話を伺っていきたいと思います。
保育園ごとの違いについて
野村:
保育園ごとの個性とありましたが、どのようなポイントで違いが見られますか?
Harukaさん:
まず規模が違います。ファミリーデイケアで少人数で先生も2人くらいの所や、大きい園だと子供が25-30人いて毎日最大数が登園してくる所もあります。
教育方針は「プレイベース」と言って遊ぶ事をメインにそこから学ぶ姿勢を育むものや、「テーマベース」といって週ごとにデイケアのセットアップやサークルの内容を変えるというものなど様々です。
野村:
どういう人が働いていますか?
Harukaさん:
幅広い年代の方が働いていますね。私が知っている先生の中で、最年長は66歳の方です。まだまだ現役で元気に保育士やってますね。
あと子持ちの先生が多いです。カナダのデイケアは勤務先に自分の子供を預けることができるんです。預けつつ、働きつつという感じです。私は今31歳なのですが、年上の人が多かったです。
チリワックという土地柄からかタトゥーが入っている先生がいるデイケアがあったり、教会に併設されている施設だと身なりがきっちりしてる先生が多かったり、園によってカラーがありますね。
野村:
Harukaさんはどういう保育園を選んだのでしょうか?
Harukaさん:
私はプラクティカムの前にアシスタントとしてアルバイトをしていたのですが、そこでプラクティカムと実際の就職先としてもお世話になりました。規模は中規模で、通常の3-5歳クラス、3歳以下クラスを持つリラックスしたプレイベースなデイケアです。
実際に保育士として働いてみて感じたこととは?
野村:
働いてみてどうでしたか?
Harukaさん:
すごく自由だなと思いました。団体行動があまりないんです。
日本での保育経験がないので比べられないのですが、日本は集団行動が多いイメージがあります。カナダの場合は、子供達みんなでやるお遊戯など、集団行動があまりないんです。
例えば、先生がアートのアクティビティを用意しているとしたら、全員でやるのかなと思いきや、やりたい子だけやるんです。
お昼寝の前に映画を観せて子供達を落ちつかせるクワイエットタイムという時間があるのですが、そんな時も「映画観たくない子は観なくていいよ」という感じです。
子供達ながらに個人の意見を尊重させていることがとても印象的でした。
苦労した点とは?
野村:
働いていて大変だった事はありましたか?
Harukaさん:
子供達と信頼関係を築くまでは大変でしたね。どの先生が新人かという事がすぐわかるので、最初の頃は言う事を聞かないんですね。笑
個人的に私は声が通るタイプじゃないので、そこも苦労しました。
大きなデイケアのサークルタイムでは、子供24人に対して私1人で話をしないといけない場面があったのですが声が通らないんです。次第に慣れてきましたが、最初は大変でした。
保護者との距離感
野村:
保護者との距離感はどうですか?
Harukaさん:
保護者との距離感は日本と比べてとても近いですね。友達とまではいかないですがフランクな感じで話します。バケーションどこ行ったの?みたいな感じです。
日本語と比べて、英語自体に敬語表現があまりないという事も関係していますね。
カナダの保育園での残業
野村:
残業はありましたか?
Harukaさん:
残業は基本的にありません。デイケアは6時にクローズするのですが、お母さん達のお迎えが遅れたら残らないといけないので残業になります。その代わり1分1ドルのレイトフィーが発生するんです。
このレイトフィーは、お母さんによってデイケアに支払われ、それが保育士の残業代になる仕組みです。1分1ドルという高額なフィーなので、皆さん基本的に遅刻はしませんね。笑
働いていて感じたマイナス面とは?
野村:
保育園で働いている時微妙だなと思った事はありますか?
Harukaさん:
両親との関係性という所でストレスを感じたことはあります。中にはやはり差別的な方もいるんですね。カナディアンの先生としか喋りたくないという空気を出す方もいましたね。
野村:
そういう場合は、ネイティブの先生が対応するのですか?
Harukaさん:
そうですね。チームワークで働いているので、あの親御さん苦手だから対応お願いできる?なんてサポートし合う事もあります。
話の内容によっては、ベテランの先生や、子育て経験がある先生から話してもらった方が良い場合もあります。私は自分で子育ての経験がないので「子育てした事ないのに」と思われる時もやはりあると思います。
野村:
そこはチームワークで柔軟に対応していく感じですね。
Harukaさん:
そうですね。もう1つカナダのデイケアでは日本のように特別支援学級が無いんです。発達障害がある子も普通の保育園に入ってきます。
障害があると認定を受けていると、子供1人に対してサポートワーカーとして専用の先生が1人つきます。
中には、認定されていない子もいます。突然叫ぶ、他の子に噛み付くなどたまに距離感がつかめない時があるんですね。
親御さんとしては、自分の子が障害を持っていると認めたくない方もいて、認定を受けていないのでサポートワーカーによる支援なども受けられません。
お母さんが認めようとしないから、発達障害かを調べる診断自体も受けられないという状況です。そういう場合どのようにお母さんに話したらいいか分からず、モヤモヤしますね。
BC州の保育士資格取得サポートについて
Harukaさん:
これからカナダで保育士資格を取る方にお知らせがあるんですが、
バンクーバーがあるBritish Columbia州では、政府主導で保育士を増やそうとしています。保育士資格に特化した奨学金もあるんです。
この制度は留学生も対象になるんです。成績関係無く、保育士資格取得のための学校に通えば奨学金を後からもらうことができます。
収入によって変動しますが、基本的に支払った分の60%程度が奨学金として返ってきます。
野村:
奨学金の枠は何名くらいですか?
Harukaさん:
基本的に全員ですが、政策は2019年からの3年間で、かつ予算が決まっています。予算が終わり次第終了なので早い者勝ちですね。
カナダで保育士資格取得を目指す人に一言
野村:
これからカナダで保育士資格取得を目指す人へ一言お願いします。
Harukaさん:
1つ言えることは「やってみないとわからない」という事です。悩んでいる場合「やるか・やらないか」のワンステップが大きいと思います。
今COSで問い合わせを受ける側になって改めて思いますが、まず第一歩を踏み出してほしいです。やってみてダメなら、そこから考えれば良いのではと思います。
まとめ
今回はHarukaさんにお話をお伺いしました。保育未経験から英語圏での資格取得・就職、しかもあえて日本人が少ないチリワックを選んだというチャレンジ精神は見習いたいですね。集団行動のエピソードにもあった「子どもでも自分で選択する」機会を与えられているという点は大変興味深かったです。カナダでの保育士資格取得を目指している方は、今回のインタビューを参考に是非一歩踏み出し、チャレンジしてみて下さい。