今回はシリコンバレー在住の宮澤亜衣さんにインタビューさせて頂きました。
宮澤さんはこれまで、広告代理店、日本企業の米国進出支援、コンサルティング業界で経験を積んだ後、デザイン系MBAを取得。現在はUXデザイナーとして働く傍ら、フリーランスで日本企業のアメリカ進出支援も行われております。
今回は「EC・小売業のアメリカ進出!計画段階で押さえておくべき4つのポイント」を、小売業のアメリカ進出支援の実体験を交え、宮澤さんにお話いただきました。
宮澤亜衣: 消費材をはじめとした業界の展示会出展サポートおよび、視察同行経験を積み、現在はデザイン経営を軸にした進出コンサルティングサービスを提供。特にスモールビジネスの米国進出コンサルティングに特化している。
「EC・小売業のアメリカ進出!計画段階で押さえておくべき4つのポイント」
目次
EC・小売業のアメリカ進出!計画段階で押さえておくべき4つのポイント
全体の費用を知るためにまずはテスト輸入
宮澤さん:
まず大前提として、アメリカでの価格を設定するためには、市場価格はいくらなのか、流通のための送料はいくらかかるのか、そこに加えて関税はいくらかかるのかをちゃんと調べておかないと、設定できないですよね。
野村:
確かにそうですよね。
大体どれくらいの送料と関税を想定すべきですか?
宮澤さん:
流通の組み方によると思いますが
まずは一度、輸入から販売までのプロセスを組んでみると計算がしやすくなりますね。
実際に近い形で試算してみることが大事なのではないかと思いますね。
例えば、一度テスト輸入をしてみると、関税以外の手数料や、倉庫までの送料などもわかるので、ここで初めて全体のプロセスの費用を掴むことができるのではないでしょうか。
小売店の視察だけでなく、エンドユーザーを深く知ること
宮澤さん:
マーケットリサーチに関しては、デスクトップで調べるだけでなく、実際にそのマーケットに足を運んで、そこに住む人たちの生活習慣を理解して、プロダクトがニーズに合うのかを確かめることが大事だと思います。
小売店への視察も価格設定や地域のトレンドを理解する為に、もちろん重要です。
ただ一旦そこから一歩下がってみて、コーヒーショップや公園で地域の人たちがどのような生活をしているのか観察をして、そこから仮説を立てるのも大事だと思います。
先日サンフランシスコで行われたテックカンファレンスでも、ある薬品会社の方が「B2B企業でもエンドユーザーを知ることが大事だ」と言っていたのですが、この考え方にはすごく共感します。
プロダクトを実際に使う人のことを考えることが大事だと思っています。。
B2B企業だと、どうしても自分たちの顧客はバイヤーだと思いがちですよね。
これは間違ってないですが、実際にどんな人たちが使っているのかまで考えると、より市場に入って行きやすいと思いますね。
野村:
何かリサーチ段階での事例はありますか?
宮澤さん:
バックパックを扱っている企業が展示会に出展した際に、サイズが小さすぎるというフィードバックを受けたことがありました。
当時のアメリカの学生は、大きな教科書をバックパックに入れて登校することが一般的で、とにかく大きなサイズのバックパックがニーズとしてありました。
このブランドの場合、最初の展示会には日本で販売している商品をそのまま出展したため、アメリカのニーズに対して小さすぎるというフィードバックを受けました。
その後、サイズの変更を行なったところ、反応が変わったということがありました。
実際にマーケットのエンドユーザーの使い方を理解して、変更を行なったことが成功に繋がったと思います。
展示会出展の際は、しっかり仮説を立ててから臨む
宮澤さん:
展示会出展を考えている場合は、事前に準備できることも多いと思います。
例えば、メインターゲットのペルソナを作って、どんな人がどんな使い方をするのかという仮説を作ることなどですね。
展示会は結構コストがかかりますので、事前準備は大切です。
野村:
大体どのくらいの費用がかかりますか?
宮澤さん:
何百万単位でかかりますね。
渡航費からサンプル発送費など、出展料以外にもコストがかかりますからね。
また、そもそもの部分で、出展することがベストなのか、もっと小さい部分から取りかかれることはないかを考えることが重要かなと思いますね。
この部分はリーンスタートアップの考え方が活用できるかなと思っています。
ビジネスモデルキャンバスのような形で、どのくらいの売り上げをあげたいという数値に対して、概算でいいので、どのくらいお金や人が必要になるのかというのを算出してみることが必要だと思います。
参照: Wikipedia – Business Model Canvas
これをすることで、一番最初にどこから始めればいいのかを明確にできます。
俯瞰して一旦全てのプロセスをみてみることが大事だと思っています。
既に米国からの引き合いがある場合は、Amazon海外発送を有効活用する
宮澤さん:
商品を海外から購入できるルートを作る際に、一番お手軽だなと思うのは、日本で持っているAmazon FBAアカウントから海外発送を可能にする事ですね。(対象外の商品群があるので、検討する場合は要確認)
野村:
いきなりAmazonに出品して売れるかというと、難しいのではと思うのですがいかがですか?
宮澤さん:
確かに、Amazonはそもそも型にはめなくてはいけなくて、ブランディングが出来ないです。
その為、これ一本で営業ツールとして使うとなると難しいと思います。
例えば海外から問い合わせが来ているものの、現状は一人一人の顧客の住所や注文商品をみて、見積もりを出して、クレジットカードで購入できるかなどの対応をしている間に、機会を逃してしまうケースというのがあると思います。
このように既に海外から問い合わせを受けている場合には、Amazonは効果的ではないかなと思います。
まとめ
今回のインタビューでは、EC・小売業のアメリカ進出の計画段階で押さえておくべき4つのポイントについてお話をお伺いしました。準備段階での仮説を立てる際に念頭に置いておくべきことから、実際にAmazonを活用して販売導線を作っておくといった実践的なアドバイスまで頂くことが出来ました。これから米国進出を検討している方には、非常に参考になるお話であったと思います。貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。
※ アメリカでの展示会出展に興味のある方は、【2020〜2021年版】アメリカの主要展示会リスト112選 (ラスベガス、ニューヨーク、サンフランシスコ他)も併せてご確認ください。