インタビュー , 北米進出

カリフォルニア出身のマーケターに聞く日本とアメリカの3つの仕事観の違いとは

カリフォルニア出身のマーケターに聞く日本とアメリカの3つの仕事観の違いとは

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Touch-Baseの4人目のインタビュウィーは、カリフォルニア出身のマーケターAshさんです。
11年間の日本での経験から、日本とアメリカの仕事観の違いをお伺いしていきたいと思います。

Ashさんの簡単な略歴:
Ash Geary
Good at Anything, Fast!の著者。25年間、Marketing/Creative StrategistとしてBtoB, BtoCのマーケティング戦略立案からエクセキューションまでを行う。

野村:
では早速、お話を伺っていきたいと思います。11年間日本で仕事をしてみて、どんなところにアメリカとの仕事観の違いを感じますか?

Ashさん:
そうですね、大きく分けて以下の3つのポイントになります。
1. 会社への忠誠心
2. クオリティの考え方
3. 問題へのアプローチの仕方

会社への忠誠心

Ashさん:
まず1つ目のポイント、会社への忠誠心に関して
私が日本に移り住んだ時、まず驚いたのが日本人の会社に対する忠誠心の高さでした。

私が見てきた日本人の方はなかなか転職しません。転職したとしても理由の多くはストレス、オーバーワークです。もちろん、アメリカでは仕事のストレスは全くないわけではありませんが、日本ほど過労死が横行することはありません。

一方で、ほとんどのアメリカ人は少しでもいい条件の話を貰えばすぐに転職します。それがたとえ通勤時間が短くなる、給料が少し良くなる、評判の良い会社で働く程度のモチベーションでもです。

Sonyの盛田 昭夫さんが書いたMADE IN JAPAN(メイド・イン・ジャパン)という本の中でも会社への忠誠心に関して似たような事が書いてありました。

ある日突然、仕事がうまくいっている外国人の部下が盛田さんのオフィスに来て「別の仕事を見つけました。チャンスを頂きありがとうございました。一緒に仕事ができて光栄です、素晴らしい経験ができました。」と告げて会社からいなくなりました。

関係も良好で仕事もうまくいっているのに、なぜ彼が会社を離れたのか全く理解できず裏切られたような気持ちになったそうです。

野村:
なるほど。例えばGoogle、Facebook、Walmartなど有名な企業はたくさん優秀な人材を抱えていると思いますが、どのようにしてそのような人材を繋ぎとめているのでしょうか?単純に他より高い給料を払っているのでしょうか?

Ashさん:
金銭面ではありません。それは研究によって証明されています。
私は会社の文化があるところに優秀な人材が自然と集まってきているように思います。

例えばGoogleは20%ルールで有名ですが、それ以外にもGoogle自体が掲げる理想と哲学が社員を引きつけている点、社員が成功するために必要な最大限の環境を提供している点が大きなモチベーションになっているかと思います。

その他にもZapposという会社では社員にパーソナルコーチを付ける、もし社員が会社を辞めることがあれば、Zapposがその社員の次の勤め先を探す手伝いをしてくれるそうです。

野村:
なるほど、Daniel Pinkのプレゼンテーションを思い出しました。

Ashさん:
そうですね。基本的に日本にあるような会社へのロイヤリティというものはアメリカにはないと考えて良いかと思います。

正直に言うと、最近ある日本の投資家と仕事をするようになって、日本のロイヤリティというものを理解し始めました。今まで日本で仕事をしていて、これほど家族のように感じる会社に出会ったことはありませんでした。

CEOが私のことを信頼してくれているのが伝わりますし、彼から多くのことを学べると確信できます。

これは私のようなガイジンが良く好む例え方だと思いますが、東京で浪人のようにさまよっていた私の刀を使ってくれるMasterを見つけたような気持ちになりました(笑)。理由はわかりませんが、彼は信用できる人だと直感しました。

野村:
なるほど(笑)、日本とアメリカどちらの仕事の文化が好きですか?

Ashさん:
若いときはアメリカの文化が好きでした。割と仕事はドライにやるのが基本で、仕事から出来る限りの感情を排除していました。

ただ歳を重ねるに連れて、日本の仕事文化に感銘を受けるようになりました。
いわゆるウェットで粘っこくて感情的、仕事だけの関係ではなくてプライベートにまで首を突っ込むこともあります。若いときはそういうのが嫌いでしたが、私個人のことを気にかけてくれる事に幸せを感じるようになりました。

クオリティの考え方

野村:
次のポイントに移りましょう。クオリティの考え方について

Ashさん:
皆さんご存知の通り、日本製品のクオリティは他の国と比べて高いです。
しかし日本人の方はただ単純に製品のクオリティを見ているわけではなくて、製作のプロセスにもこだわっていることに最近気付きました。アメリカでは製品のクオリティに気を遣うのは当たり前ですが、プロセスにまで目を向けません。

野村:
なるほど、確かにそうですね。

その話に関して、こんな話を聞いた事があります。
もしカフェで働いていて、お客さんがメニューにないものをオーダーされた場合
日本人の場合は、たとえそれが自分でできるものだとしても、まずマネージャーに確認して許可を取りにいってからそれを行います。一方でアメリカ人の場合は、それが自分でできると判断すれば独断でやってしまいます。

これは少し極端な例かもしれませんが、日本の場合は「許可を取ること」がプロセスに含まれているので、たとえ結果が一緒でもそのプロセスを守らなかったことに対して怒られます。今回は良かったけど次回もうまくいくかはわからないというのが理由です。

よく言われるのが、このプロセス重視のやり方はミスを最大限減らすことが重要だったマニファクチャーの時代には通用したけど、今のイノベーションが求められる時代にそぐわないと言われます。

Ashさん:
確かに、現代は100年前のように大量生産すればうまくいく時代ではなく、消費者とうまくコミュニケーションを取りつつ、ニーズを創出していくことが重要です。

ただ私はまだまだマニファクチャーは重要だと考えています。
ヘッドホンで音楽を聞きながら、机の上にあるパソコンのキーボードを毎日叩きますし、近い将来、ものづくりをストップするとも思えません。

日本の強みはそのままに、今の時代にあわせたやり方を模索すべきだと思います。

問題へのアプローチの仕方

Ashさん:
最後に問題へのアプローチの仕方について
日本人の方はリアクティブ(※)に問題を対処するのに非常に優れています。ただ総じてプロアクティブ(※)に物事を考えるのが苦手だという印象を受けます。

注釈:
リアクティブ: 問題が起こってから対処するアプローチ
プロアクティブ: 問題が起こる前に先行して物事に取り組むアプローチ

野村:
そうですね。僕自身とてもリアクティブに物事を考えるので納得です。
アメリカで流行ったKaizenという言葉のとおり、今目の前にある問題をもとに解決策を考えるというアプローチの方がしっくりきます。

その起源はどこにあるかを考えた時に、僕は日本の学校のテスト文化からきているのではないかと思います。

たくさんのテストを経て、物事を学習するよりもテスト対策の方がうまくなったように感じます。それが良いか悪いかは置いておいて、この先生はこういう問題の出し方をするから押さえるポイントはこの辺、もしそれが外れても次のテスト対策に生かす・・・というように。

Ashさん:
そうですね。それもあると思います。

日本はアメリカのように資源に恵まれた国ではなく、今ある物の中で何ができるか、それをどのようにマネジメントすれば価値を最大化できるかを考える必要がありました。また、限られた資源の中で失敗しないように最大限の注意を払う必要もありました。

少ない資源を有効活用する技術について、アメリカは日本から学ぶべきところは多いと思います。

ただ今はインターネットを通して、世界がフラットになってきています。
もう少しプロアクティブに日本の外の市場も開拓して、新たなモノを獲得しにいく、そのためのリスクをどんどん取るべきだと思います。

先ほど話に出た投資家の方は、日本の”タイムトラベル”という現象の話をよくされます。
欧米で流行ったものが3年後にアジアに来て、それが革新的という見方をされる現象です。例えば、マーケティングの方法論やテクノロジーでも欧米の会社は常に最新のものを追いかけますが、アジアはまだまだそのトレンドの後を着いていっている印象があります。

もちろん未来を見通しイノベーションをしっかり考えているCEOの方々が増えてきていることも知っているので、そういう方が今後増えてくれば面白いと思います。

ボトムライン

クオリティの考え方やリアクティブとプロアクティブの話、当たり前に思っていた日本の仕事観を外からの目線で聞けておもしろかったです。ちょうど2週間前に、今のボスからリアクティブに物事を対処するのはうまいけど、もっとプロアクティブになった方がいいよと言われたのを思い出しました。

日本人と一括りにできないほど個人差はあるものの、それでも日本人として優れている部分、苦手な部分はあると思っていて、それを見つめ直す良い機会になりました。Thank you, Ash 😀

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