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米国の展示会出展 | アメリカと日本3つの違い

米国の展示会出展 | アメリカと日本3つの違い

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今回は、I-COMの森原潔さんへのインタビュー。森原さんはこれまで10年間、アメリカのロサンゼルスを拠点に製造業、食品業、観光業など、様々な業種の日系大手企業や政府関係のアメリカ進出に携わってきた経験をお持ちです。

中でも特にアメリカでの展示会出展の知見が豊富で、今回は以下3つのアメリカと日本の展示会の違いを伺ってきました。

1. アメリカの展示会は参加者の本気度が高い
2. 展示会出展料が日本の4倍から5倍
3. 発注者側の責任が重い、まずは目的を明確に

「なぜ、アメリカの展示会出店料が高いのか?」
「展示会出店の費用対効果は?」
「展示会出店時には何を抑えておくべきか?」

これらの疑問を持っている方はぜひ今回のインタビューを見てみてください。

※ アメリカでの展示会出展に興味のある方は、【2020〜2021年版】アメリカの主要展示会リスト112選 (ラスベガス、ニューヨーク、サンフランシスコ他)も併せてご確認ください。

Profile:

森原潔: 日本で大学を卒業後、外資系タバコ会社・外資系ビール会社を経て米系大手広告代理店、McCann Ericksonに転職。外資系のフィルムメーカー、自動車会社、保険会社などをAccount Supervisorとして担当。2002年に家族と共にアメリカに渡航し、ロサンゼルスの日系の広告代理店にて日系企業のアメリカ進出サポートを行う。現在は自身のエージェンシーI-COMを立ち上げ、展示会出展、イベント企画、TVコマーシャルや雑誌広告の制作、メディアバイなどマーケティングの業務全般をサポートしている。

米国の展示会出展 | アメリカと日本3つの違い

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米国の展示会出展 | アメリカと日本3つの違い

野村:
まず日本よりデジタル化が進んでいるアメリカにおいて、そもそも展示会のニーズがまだ存在するのか伺いたいと思います。

森原さん
リーマンショックの直後など、一時的にアメリカでも展示会ビジネスが落ち込んでいた時期もありましたが、今はすごい展示会の需要が多く、施工会社を含めてマーケットが伸びています。これまでマスメディアにかけていたお金を、展示会のような直接売上に繋がる場所に投資するようになったのが伸びている原因だと考えています。

ラスベガス、ロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴなど大きなコンベンション施設がある都市では、良い展示会を誘致するため、誘致合戦が行われているほどです。特にラスベガスでは、一番大きな会場だけでは収まらないほど来場者が多い状況で、展示会場を持っているホテルを使って、同時並行で様々な展示会が行われているほど活気があります。


参考: 森原さんが携わった J-Pop Summit 2015の様子。会場には多数の来場者が参加していることがわかる。

野村:
なるほど。

違いその1: アメリカの展示会は参加者の本気度が高い

森原さん
まず日本の展示会と比較すると、アメリカの展示会の来場者の意気込みが全然違うと感じます。

日本の場合だと、会社から「こういう展示会があるから行ってこい」と言われ、何人かで見て来てとりあえず報告書をまとめて提出。それで終わりのケースが多いと思います。

ただアメリカの場合だと、展示会に来ているバイヤーは、何か会社のプラスになるものを真剣に探しています。展示会にかける意気込みが違うと感じています。

私が以前担当させてもらったロサンゼルスの展示会では、展示会の場ですぐ商談となり、次のミーティングでは一億円以上の取引が決まったケースがありました。アメリカの展示会はすぐに商談に結びつきやすい場と言えます。

野村:
次のミーティングでいきなり一億円の取引はすごいですね。
アメリカ展示会に出展を考えている日系企業に向けて、何か準備できることや押さえておくべきポイントがあれば教えてください。

森原さん
逆に来場者目線に立って、どういう風にブースを作れば興味を持つのかを考え、どのような仕掛けをするのかをしっかり考えておく必要があります。

特に初めて出展する企業の場合、良い位置のブースを取ることは困難です。
というのは、アメリカの展示会の場合、その年の展示会最終日か最終日前日に、次の年の展示会申込みの受付を始めます。

そのため、毎年出展している企業に先に良い場所を抑えられてしまい、初めて出展する企業は人があまり通らない端の方にブースを置くケースがほとんどです。人通りが少ない場所であっても、そのブースに行きたくなるか、行く意味があるかという目線で仕掛けをうまく作らないと、参加するだけで終わってしまいます。

まずはその展示会に出て『達成したいことはなにか』ということを考えること。そしてそれに応じた予算決めをしていく必要があります。


参照: 森原さんが携わった外国人旅行者の誘致活動を行う政府機関 JNTO (日本政府観光局)のブースの様子


参照: 森原さんが手掛けたOYOのブースの様子

低予算でも大反響を呼んだ成功事例

以前、面白い形のサンダルを作っている靴メーカーがラスベガスの一番大きなファッションの展示会へ出展をする際、弊社でサポートをさせて頂いたことがあります。

初出展のため、ブースのコマ数が小さく、ブースの場所も会場の奥の方でしたが、結果、ものすごい数のバイヤーが集まり「ぜひこれをうちで売らせて欲しい」と大盛況になったことがあります。成功要因として、製品の持つユニークネス(独自性)をうまくブースで表現できた点にあると考えています。

西海岸ではサンダルを履くのが一般的で、競合商品も多数存在しますが、「こんなデザインみたことない」という驚きがあり、自社で取り扱いたいというバイヤーが押し寄せてきました。

実はこのプロジェクトは予算が少なく、ブースも施工会社も雇わずに手作りで行いました。

製品のデザインのよさをどう引き立てるかというのを考えて、ブース構成を設計したところ、そこが上手に来場者に刺さったのだと思います。『何を伝えたらターゲットに一番刺さるか』ということをまず考えることが重要ですね。

100人ブースに来たから成功ではなくて、1人ビジネスに結びつくお客さんが来てくれれば良いので、ブース設計を考える際に、そこをブレずに考えると、いろいろな戦略の立て方が出てくると思います。

野村:
なるほど。

違いその2: 展示会出展料が日本の4倍から5倍

森原さん
アメリカの展示会出展にはお金がかかります。日本と比べると4倍から5倍程度かかるというイメージです。

ブースのスペース代自体は大きく変わりませんが、ブース施工費用が大きく異なります。
アメリカではブースの施工を組合の方にお願いしないといけないので、組合で守られた高給取りの人たちがゆっくり作業を行うため人件費が高くつきます。

日本だと部材費が大きくて、人件費が小さいのですが、アメリカは逆で、人件費が大きくなるので、大掛かりなものを作ろうとすると費用が高くついてしまいます。

野村:
大体の予算はどのくらいを想定しておくべきですか。

森原さん
目安としては、ブース1コマで1万〜1.5万ドルくらいですね。
日本だと、そのスペースにプラスである程度の造作物がスタンダードでついてきますが、アメリカの場合、カーペットも電気もついてきません。

野村:
本当に場所だけということですね。

森原さん
そうですね。場所とテーブルと椅子だけです。横の仕切りもありません。

そのため。最低限必要になる電気やカーペットなどの準備コストが別途必要です。
そういう最低限のコストを足していくだけで、ある程度の額になってしまいます。

違いその3: 発注者側の責任が重い、まずは目的を明確に

森原さん
日本の企業の場合は、「こういうイメージで良いもの作ってよ。」と丸投げする事が多い印象です。
残念ながら、そういうやり方はアメリカでは受け入れられません。

これは展示会に限らず、なにか物を作る際に顕著なのですが、発注側の責任の重さがアメリカと日本ではかなり違うと感じています。

例えばテレビのCMを作る際に、これは何の目的で作るのかが明確である必要があります。
目的がはっきりしていると、それに対してしっかりとブリーフをかけるのですが、「今旬なタレントを使って作って下さい」というような手段が目的化している指示の場合、目的がブレがちです。

発注の際に目的がはっきりしていないと、ディレクションがしっかりしていないということで、ベンダーに甘く見られてしまい、最終的に制作物のクオリティにも影響します。

昔テレビのCM制作を依頼された際に、発注側のディレクションがブレブレで何度も工程をやり直したことがありました。撮影クルーを動かすとそれなりの費用がかかるので、もちろん無駄なコストが発生してしまいます。

発注側の責任の重さに加えて、発注側の取り組み方がアメリカと日本では大きく異なるかなと思います。

今後アメリカに進出を考えている日系企業へのアドバイス

野村:
これからアメリカ進出を考えてる企業にアドバイスがあればお願いします。

森原さん
オリンピック後は確実に日本の内需は下がって行き、景気が悪くなるというのは誰もが感じている事だと思います。
そこから『いかに日本の外に出て行くか』というのが2020年以降の課題になってくるのではと思います。

その中で、アメリカやカナダへの進出にあたって、ハードルを高く考えすぎないというのが重要だと思います。

日本の製品は優秀なので、製品の良さをしっかり現地の消費者に伝えることができれば、マーケットは必ず存在すると思うので、是非チャレンジしてほしいです。

あとは、進出の際に組む相手を間違えないことも大切です。

野村:
どのようにパートナーを選べば良いでしょうか?

森原さん
今の時代Webサイトは誰でも簡単に綺麗に作れますので、ものすごい立派な会社にみせることもできてしまいます。
こんなことも、あんなこともできますという風呂敷を広げているところは、実は何もノウハウがなかったり、まるっと外注しているケースもあります。

そのため、Webの情報だけではなく、すでに進出している企業の人に話を聞く、そこでビジネスをしている人から直接情報を集めることが大切です。

以前、日本の大手小売企業がアメリカに進出してきた際、アメリカのコンサルティング会社を雇い、高い費用を払ってマーケティングの予算を使い、結果的にうまくいかずにどんどんクローズしていったケースを目の当たりにしました。パートナー選びはとても重要です。

私自身もアメリカに来る前は、アメリカ人はすごい優秀で、自分なんて全く通用しないだろうなと思ってたのですが、実際にアメリカで十年以上働いてみると、意外と言っている事が薄っぺらいなと感じる事も多いです。プレゼンはすごい上手だけど言ってる内容はペラペラとかはよくある話です。笑

野村:
わかります!笑

森原さん
逆に日本の人は多くを語らないけど、すごく優秀な人が多いです。
個人的には仕事の処理能力に関して、瞬時な判断能力とか頭の機転など日本人は明らかに優秀だと思うので、臆せずアメリカにチャレンジしてもらいたいなと思いますね。

まとめ

今回のインタビューでは、アメリカでの展示会出展にについてお話をお伺いしました。
来場者の意気込みや出展コストの違いなど日本と大きく異なることから、発注時に気を付けるべき点などアメリカ進出時の実践的な事までお話頂きました。これからアメリカ進出を検討している日系企業の方には、非常に参考になるお話であったと思います。貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。

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