今回はカナダ・バンクーバーで広告マーケティング会社のCK Marketing Solutions Inc.を経営する長さんにお話を伺いました。
本インタビューでは、海外での起業・事業拡大にフォーカスしてお話頂きました。
日本時間の2020年11月20日(金)に「Google, Facebook 広告運用をする際に必ず押さえておくべきポイント」というテーマでトークセッションを開催します。これまで10年近くデジタルマーケティングに携わってきた経験をもとに、広告運用の初心者の方が押さえておくべきポイントをご紹介。詳細はこちらより。
プロフィール:
カナダ・バンクーバーとトロントを拠点とする広告代理店CK Marketing Solutions Inc.代表/CEO。富士通にてエンジニアや営業、プロジェクトマネージャーを経験し退職、2006年に単身カナダへ渡り2010年に起業。LifeVancouverやツーリストマップなどの日系メディア媒体を運営、現地ネットマーケティングを日本やアメリカをまたいでIT/Webシステム開発、クリエイティブデザイン、映像制作やCG/VFXなどを手がけるプロデューサー。また州政府などと協力し日本からの企業の北米進出支援やコンサルティング、現地マーケティングなどを行うビジネスデベロップメント事業も行っている。
渡部:
まずはなぜバンクーバーで起業しようと思ったのか教えて頂けますか?
長さん:
そうですね、基本的には僕は大人になったら会社での社会人経験の後、最終的には会社を経営する(社長になる)ものだと思って生きてきたんですよね笑
だから会社を作る(起業する)ことに関しては、特に迷いはなかったです。
父親も脱サラで会社を経営していて、幼い頃からそれをみていたので、自分のキャリアのゴールはそこだと勝手に思っていました。
当然自分で会社で経営をするといっても、簡単にできることではないということはわかっているので、日本では会社に入社して、エンジニアから営業まで経験しました。
会社を起こす場所がバンクーバーになったのは、日本を出て世界でビジネスをしたいと思っていたからです。
僕らの世代は何でもカッコイイもの、新しいものはアメリカから、みたいなイメージがあってそれで北米だったのですが、ビザや滞在などのことを考えるとアメリカよりカナダの方が行きやすかったので、最初はバンクーバーからとしました。
目次
先人の知恵を最大限活用!ただしギブアンドテイクを忘れずに
渡部:
バンクーバーのように異国の地で起業となると当初は障壁もたくさんあったと思いますが、起業時はどんなことを意識して行動していましたか?
長さん:
正直言って、会社の設立はあっという間でしたね。
調べながらやっていたらもう出来たという感じでした。
後からこうしとけばよかったみたいな抜けはたくさんありましたが笑
ただ一番困った点は、全てのやり方がどこかに丁寧に書いている訳ではないし誰かが教えてくれるわけでもないので、しっかりとした情報を自分で見つけないといけないことですね。
日本の場合だと、ここに印鑑押して、この書類を準備してというのが丁寧にまとまっていると思います。
ただカナダの場合だとそういう情報がまとまっていないケースが多いですね。
聞く人によって全く違うことを言ったりしますからね笑
渡部:
確かに聞く人によって言うことが違うというのはカナダでよくあることですね笑
そういった中で正確な情報を得るためにどうされたのでしょうか?
長さん:
最初、僕は、すでにこの地で成功している人たちとのネットワークを作りました。
バンクーバーには日本人企友会というのが存在していて、ここに行けば、すでにバンクーバーでビジネスを行なっている方に出会えるわけだと。
この機会を活かさないわけにはいかないと思って、すぐにイベントに参加して、ボランティアを行わせてもらうことになりました。
ここでかなりバンクーバーでの実践的なビジネスについて勉強させてもらったりネットワークを増やしたりして多くのヒントを得ることができました。
渡部:
なるほど。わからない部分は先人の知恵を貸りる方が早いという事ですかね。
長さん:
そうですね。もちろん自分でどうにかしようとすることも大事です。
ただこの企友会に行けば、「バンクーバー 起業 日本人」とググって表示される人に直接あって話せるわけですからね笑
ここのおかげで1から知り合いを作るよりもかなり早いスピードでネットワークと知見が拡がり、スピード感と現実味がぐっと上がったかと思っています。
渡部:
具体的には、どのような点が企友会の方に聞いて役立ちましたか?
長さん:
例えば、単純に弁護士さんはどうしたらいいのか、とか会計や決算のこと。
マーケティング、オフィスの探し方にどんなビジネスがどれくらいの規模なのか、競合や市場の様子、またバンクーバーだけでなく日本やアメリカとビジネスをやっている人やそのスタイル、あとどんな事が今必要とされているのか、など様々ですね。
またこの先人に頼ったことによって、知見を得ることが出来たわけですが、その時に僕が一番大切にしていたことは、ギブアンドテイクですね。
当然こちらも情報が欲しいわけですが、自分もただ「情報クレクレ星人」で情報をもらっているだけではだめだと思ったんです。
そこで、日本ではプロジェクトマネージャーの経験もありましたし、イベントの企画も行なったことがあったり、もちろんSIベンダーとして多くの企業のソリューションを提供してきたので、この企友会の活動でセミナーを企画したり、仕組みを作ったり会自体の発展につながるような貢献をさせて頂きました。
そういった表に出る活動によって参加している会員さん達も頼ってくれるようになってきたり、働きをみて仕事の依頼を頂いたりして、珍しい名前なので名前も売れて笑
結局このギブアンドテイク、というより「まず与えること」を徹底したことが、その後のビジネス展開にも繋がったかなと思います。
常にお互いのメリットを考え、事業を横に広げていく
渡部:
そのビジネス展開についてですが、長様はいろんな事業を行なっていますよね。
ズバリうまく行った理由はどこにありますか?
長さん:
ビジネス展開については、まずは先ほど述べたギブアンドテイクというより「お互いにとってメリットがあること」が基本の考えとなりますね。
立場によって等価ではない時もありますが、基本的に自分のビジネスやビジネスモデルが相手にとってメリットがあるかということです。
僕はそもそもビジネスモデルを考えたり研究することが大好きなんですよ。
色々な企業のビジネスモデルをとにかく知りたくなる癖があって、例えばこのレストランはどれくらいの原価でどのくらいの利益が生まれるのかとか、どうやって流通をコントロールしてるか、とか、いわゆる「儲かる仕組み」でしょうか。
これと同じ考え方で、こちらでビジネスをしている人の話を聞いた時に、自分であればどれだけそれが効率的に、プラス付加価値をもって出来るかなと常に考えていましたね。
そして考えるだけでなくて、それを実際に提案したりしていました。
そうすると色んなことが繋がっていって、じゃあ次はこれをしたらもっと良くなるんじゃないかなとなりますね。
例えば、最初ここでカナダでの人材サイトの立ち上げを行なったのですが、そうするとビザが必須となり、ビザのコンサル事業も必要になるんじゃないか、その次はPRをしたりWebや今でいうオウンドメディアを使ったマーケティングが必要になる。
さらにその後はもっと現地の情報がわかるメディアを自社でもった方がいいのではとなって、全てが繋がってくるんですよね。
そうしたシナジー効果で事業がどんどん拡大して行きましたね。
画像:CK Marketing Solutions Inc.が運営する日本人向けバンクーバー情報メディアLife Vancouver
海外にいることを活かした事業展開
渡部:
このバンクーバーという地のメリットは事業拡大する上で何かありますか?
長さん:
そうですね、かなりあると思います。
アジアからみたら北米の玄関口みたいなところですし、実際今バンクーバーでビジネスを行なっていますが、マーケットはトロントであってもいいし、アメリカでもいい、またアジアでもヨーロッパでもいいわけです。
ローカルのマーケットだけに拘らずにビジネスを行うことが出来ることがメリットですね。
日本にいると、どうしても日本のマーケットだけにこだわる雰囲気があるじゃないですか。
特に一部は商習慣がすごく閉鎖的です。
だから今後このメリットていうのはさらに高まるのではないかなと思っていますね。
今の時代、常にグローバル化と言われていますが、時差とかロケーションとかの地の利を活かして色んなビジネスを生み出すことが出来るかなと思っています。
例えば、日本ではITの人材が不足していて、ただ企業は社員を残業させることが出来なくなって来ているんですね。
そうするとどうしてもビジネスのスピードは遅くなってしまいます。
ただしカナダからリモートで社員を雇うことができれば、日本の夜中にも業務を行うことが出来るようになります。
また別の例で言うと、日本では販路がこれ以上拡大出来ない企業に対しても、北米マーケットの開拓をサポートすることが可能です。
時差・ロケーションの地の利を活かすことが出来るので、事業拡大もかなり柔軟に行うことが出来るかなと思っています。
信頼が新たなビジネスを生む!日本流の丁寧な仕事が信頼獲得のカギ
渡部:
日本人としてカナダで会社を運営していく中で、文化的な違いで困ることはないですか?
長さん:
文化の違いで言えば色々あるのですが、実際に会社を運営していく中では、メリットばかりですね。
まず北米では実力社会である点が強いです。
実力社会というと起業して生き残るは難しいのではと感じるかもしれませんが、僕は全く逆に感じています。
実力社会だからこそ、小さな会社でも結果を残せば認めてくれる社会だと思っています。
僕は逆にこれがすごくやりやすいなと感じていますね。
日本だとどうしても会社の名前や大きさで、相手にされないとかあるじゃないですか。
カナダでは会社の名前ではなくて、実績や信頼が評価の対象になることが多いです。
渡部:
実力社会はむしろ起業する人にはメリットになるのですね。
実績と信頼を生み出すことについて具体的な方法を教えて頂けますか?
長さん:
1つ目は日々の仕事を丁寧に行なって信頼してもらうことです。
日本なりの商習慣のいいとこをカナダでも活かしているのですが、例えば日本の会社では行う「ダブルチェック」や「再度の確認」などは、カナダの会社ではいい加減に行われることがあります。
僕らはその細かい部分までしっかりと行います。
それだけでも他の企業と差別化が出来て信頼されやすくなりますね。
単純に日本のやり方で通そうとすると失敗すると思いますが、日本のやり方のいいところはこっちでも使うようにしています。
そして2つ目は、コネの力ですね。
日本でコネというとあまりいいイメージはないですよね。
ただカナダではコネには悪いイメージはなく、むしろ有効活用するものとなっています。
例えば、ある会社と仕事をさせてもらって、その会社から次の仕事が生まれそうな会社を紹介してもらう。
すると、その会社は僕らの実績をすでに知っているので、それなら信用できそうだなということになりますよね。
こういう信頼を頼りにビジネスが生まれることがカナダでは非常に多いですね。
最後に一言
渡部:
最後に今後海外で起業を考えている人にアドバイスをお願いします。
長さん:
やはり最初に各方面で確かなリソースを確保することですかね。
同じ場所で先に成功している日本人と情報交換しながら話を聞くことは効果的です。
あとは立ち上げ時のスピード感は大切で、契約とか法律に関しては無理に自分でやろうと思わないで、プロに頼んでなるべく早く立ち上げが出来るようにした方がいいかなと個人的には思いますね。
最初の初期投資を惜しまないことですね。うまく行けばその投資はすぐ返って来ますので。
まとめ
カナダの実力社会で生き残る為のコネの力については、私自身もバンクーバーに住んでいて大変共感する部分でした。
コネ=信頼の証として扱われる社会であるので、無理して誰にも頼らず自分で全てやることよりも、長さんの仰る通り、頼れるところは人に頼って、それに対してギブアンドテイクで自分の価値を提供する。そうすることで生まれる信頼の連鎖が、北米ビジネス拡大の鍵となるのかなと感じました。