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アメリカの売上税の基礎知識: 税率・課税対象・日本の消費税との違い

アメリカの売上税の基礎知識: 税率・課税対象・日本の消費税との違い

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アメリカで事業を営む人が知っておきたい税金シリーズ。給与税法人税に続いて、今回のテーマは売上税です。

日本の消費税との違いから計算方法や申告の頻度、支払い方法まで、全般的に知っておきたい事項をまとめてみました。

売上税とは?日本の消費税との違い

日本の消費税とアメリカの売上税 (Sales tax) 。最終消費者として商品を購入しているだけでは分からないかもしれませんが、その仕組みや課税対象は大きく異なります。日本の消費税とアメリカの売上税の大きな違いは、消費税は原材料や商品の仕入れをした人も払う必要があるのに対して、売上税を支払うのは最終消費者のみである、という点です。これは一体どういうことでしょうか。

例えば、Aという畜産業者が卸売業者Bに販売した商品を小売業者Cが販売する場合、売上税を支払うのはCから最終商品を購入したお客さんのみ、ということになります。それ以外の人に売上税が課税されることはありません。一方で、日本の消費税は、最終消費者だけでなく、Aから商品を購入したB、Bから商品を購入したCにも課されることになります。

また、日本の消費税とアメリカの売上税では、納付先も異なります。消費税は国に納付、地方消費税は所管税務署に納付するのに対して、アメリカの売上税は州でのルールのため、州政府への納付が求められます。州ごとに自治が行われているアメリカでは、対象となる商品、税率など、売上税のルールも州ごとに異なりますので、複数の州で事業を行っている場合には注意が必要です。

今回は、多くの人が事業を行うことに興味があるニューヨーク州を例に話を進めていきたいと思います。

売上税の課税対象

ニューヨーク州では、一部の例外を除き(生鮮食品や薬など)、有形商品のほとんどは売上税の課税対象です。一方で、サービスについては、ほぼすべてのサービスが非課税です(主な例外は不動産の修理や補修)。前述したように、再販業者への販売は非課税ですので、卸売業者から再販業者への販売には売上税は発生しません。

ただし、こうした場合でも、卸売業者は売上税の申告書上で再販業者への販売額の記載が必要で、その記載内容について州の税務当局が確認を行っていることを知っておくことが大切です。卸売業者は、再販業者から、再販業者であることの証明である“Exemption Certificate (免除証明)”を入手する必要があります。


様々な小売店が立ち並ぶニューヨーク。小売業者は原則として売上税の納付が必要。

売上税の税率

売上税の税率は、州や地域によって異なります。例えばマンハッタンの場合、ニューヨーク州の4%の売上税に加えて、ニューヨーク市の4.5%、さらにはMetropolitan Commuter Transportation District Tax(通称MCTD税)がかかり、売上税の税率は8.875%となります。全米全体では、州と地方の売上税の合計で、7%から8%の地域が多いです。

売上税の申告書提出の頻度と期限

売上税の申告書提出の頻度は、四半期ベースでの会社の課税売上の規模と年間での売上税の納税義務額によって異なります。基本的には以下のスケジュールでの四半期ベースでの申告書の提出と納税となります。

  • 第一四半期:12月から2月分を3月20日までに申告・納税
  • 第二四半期:3月から5月分を5月20日までに申告・納税
  • 第三四半期:6月から8月分を9月20日までに申告・納税
  • 第四四半期:9月から11月分を12月20日までに申告・納税

ただし、ニューヨーク州では、会社設立後最初の数回で、1四半期あたりの課税売上が30万ドル以上の場合、毎月の申告が必要となります。また、年間での売上税申告額が3千ドル以下の場合、一年に一度での申告で良いと州から通知が届く場合があります。

申告の頻度に関わらず、売上税の申告は、対象となる期間の翌月の20日までとなっています。

売上税の申告書の作成方法と注意点

売上税の申告書を作成するためには、日々の正確な記帳が必要です。どのような事業形態であれ、商品をPOSシステムに登録する際に、商品ごとに売上税の対象の有無を入力し、適切な売上税を設定しておくことで、お客さんから正しい金額の売上税を徴収することができます。

そして、POSと連動した会計システムを用いて、対象期間に対応した課税売上、非課税売上、売上税の徴収額のデータを集計して、申告書を作成することとなります。

なお、対象期間に売上税の徴収がたとえ全くなかった場合でも、$0として申告書の提出が必要であることに留意が必要です。

売上税の申告と納税の方法

申告は、該当する州のウェブサイトからの電子申告が一般的です。申告書提出の遅延や不正確な内容の申告書であった場合、罰金の対象となりますので、申告書は余裕を持って作成したほうが良いでしょう。

会社設立直後にすべきこと

売上税の対象となる売上を上げるビジネスを行う場合、州の税務当局へ登録を行い、”Certificate of Authority (営業認可書)”を入手することが必要です。これにより、売上税を徴収したり、必要であれば前述したようなExemption Certificate(免除証明)を発行したり、受け取ったりすることが可能となります。遅くとも事業を始める20日前までに登録を終える必要があります。

登録はオンラインで行うことができます(NY州の場合は、こちらから)。

申請には、通常のタイプと期間限定のタイプがあります。売上税の区切りとなる四半期ベースで二四半期を超えて事業を行わないことが確実である場合は、期間限定のタイプでの申請となりますが、一般的には事業は長期で行うことになると思いますので、通常のタイプでの申請となります。なお、展示会やイベントなどの場合は通常タイプの申請となることに注意が必要です。

州の当局から発行されたCertificate of Authorityは、売上税を徴収するビジネスを行なっている全拠点に掲示を行います。一つの会社で複数拠点での事業を行なっている場合には、申請時にその旨を登録し、事業拠点数分のCertificate of Authorityを入手します。事業拠点ごとに会社が異なる場合は、会社ごとでの申請となります。Certificate of Authorityを掲示していない場合、罰金の対象となりますので注意が必要です。

最後に

アメリカの売上税は日本の消費税と似ているようでいながら、最終消費者にしか課されないという点で大きな違いがあります。事業拠点が少ない会社の場合、自社で申告を行うことが十分可能ですが、複数の州で事業を行なっている会社、オンラインで商品を販売している会社についてはより混み入った申告となりますので、会社設立の早い段階から顧問会計士に相談して申告漏れがないように注意することが求められます。

参考資料: 売上税に関する日英用語集

日本語英語
売上税Sales tax
売上税の申告書Sales tax return
再販業者Reseller
四半期ごとの申告Quarterly filing
電子申告Electronic filing
営業認可書Certificate of Authority
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