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アメリカでの C Corporation設立の流れ・完全ガイド

アメリカでの C Corporation設立の流れ・完全ガイド

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前々回の記事では、アメリカでの会社設立について、LLCとC Corporation(以下C Corp)、S Corporation(以下S Corp)の違いについて比較形式で検討しました。現時点での会社の状況や今後目指す姿により、どの形態が良いかは慎重な判断が必要です。

C Corpは複数種類の株式発行が可能な上、国内外からの投資も受けられて株主数にも制限がありません。また、毎年の利益を会社内に内部留保することが可能です。そのため、日本の会社を親会社とする場合や、外部投資家を募っての大規模な事業展開を見据えた場合に最適な形態と言えます。

今回はC Corpの設立方法について、ニューヨーク州での会社設立を例にとってステップごとに解説していきたいと思います。アメリカでは州ごとに自治が行われているため、会社設立のプロセスも、詳細は州ごとに異なりますが、全体の流れはどの州も大きな違いはありませんので、この記事でアメリカでのC Corp設立の全体像や費用感のイメージをお伝えできたらと思います。

C Corp設立のステップ

ニューヨーク州でのC Corp設立プロセスは、会社名の決定、Registered Agent (登録代理人)の選定、会社の登記、定款の作成、取締役の選任と最初の取締役会の開催、株式の発行、EIN番号の取得、銀行口座開設となっていて、およそ2-3ヶ月が目安です。会社設立にかかる費用はおよそ$250です(下記ステップを終えるために依頼した専門家への支払いや後述する保険等は含みません)。

それでは、設立プロセスをステップごとに見ていきましょう。

1. 会社名の決定

社名は、他社が使っていないもの、既存の他社の社名と紛らわしいような類似の名前はNGです。会社名の候補が決まったら、ニューヨーク州のデータベースで使用可能な社名であるかを調べてみましょう。

C Corpの場合は、Corporation, Incorporated、もしくはその省略形であるCorp.やInc.を社名の最後に付ける必要があることにも留意が必要です。


ニューヨーク州の会社データベースのスクリーンショット。類似の名前の会社がないか確認が必要。

2. Registered Agent (登録代理人)の選定

ニューヨーク州を含む多くの州ではC Corpの設立に際してRegistered Agentの選任を必須としています。Registered Agentは、ビジネスに関する法的や公式の通知を受け取り、会社に知らせる役割を担っています。会社の代わりにこうした通知を受け取ることに合意した個人や会社であればRegistered Agentとなることができますが、ニューヨーク州内に住所があること(私書箱は不可)が条件です。

Registered Agent大手のNorthwest Registered Agentに頼む場合、年間$125です。彼らの住所をRegistered Agentとして開示でき、その住所に届いた書類はスキャンしてシェアして送ってもらえるので便利です。

ポイント

小規模ビジネスの場合、最初は役員をRegistered Agentとし、その後事業が大きくなった際にRegistered Agentを請け負う会社を選任することもできますが、Registered Agentの住所は一般公開されますので、役員に頼む際にはプライバシーの観点等を含めて検討が必要です。

3. 会社の登記

次に、Certificate of Incorporation、いわゆる登記簿を州当局へ提出します。こちらのフォームを埋めて申請費用にあたる$125の小切手を郵送することもできますが、オンラインでの申請とクレジットカードでの申請費用の支払いが、迅速性と利便性の観点から便利です。オンラインの場合、平均7営業日で処理が完了します。

なお、郵送の場合の書類と小切手の送付先は以下となっています。


New York Department of State, Division of Corporations
One Commerce Plaza, 99 Washington Avenue, 6th floor, Albany, NY 12231

4. 定款の作成

会社の登記が終わった後、bylaws、いわゆる定款を作成し、会社運営にあたっての基本的なルールを定めます。こちらは州当局への提出は不要ですが、銀行やIRS(米国内国歳入庁)等に対して会社の正当性を示す書類ともなり得ますので、社内の公式書類として作成を行い、保管することが求められます。

5. 取締役の選任と第一回取締役会の開催

最初の株主総会でその後の取締役が任命されることとなりますが、会社の設立者は、会社設立直後に、それまでの間の取締役を任命し、各取締役の名前と住所をIncorporator’s Statementに記載します。この書類は設立者が署名を行い、会社の記録として保管します。

そして、創業期の取締役メンバーで第一回取締役会を開催し、Corporate officersの任命やbylawsの適用、会社のメインバンクの選定、決算期といった会社の根幹に関わる事項を決定します。

ポイント

取締役会や株主総会は、必ず議事録を書面で作成し、会社の正式な書類として保管します。

6. 株券の発行

各株主に対して、株券を発行します。小規模な会社の場合、通常は株式証明を紙で発行します。

7. EIN番号の取得

EIN番号は、Employer Identification Numberの略称で、法人税を管轄しているIRSにより各会社に付与される固有の番号です。この番号により納税状況が管理され、事業経営において免許等必要な場合にも、EIN番号の提示が求められます。

SSNやITIN番号を持っている人は、下記のリンクからオンラインで申請を行います。
Apply for an Employer Identification Number (EIN) Online

SSNやITIN番号を持っていない人は、フォームSS-4を郵送またはファックスでIRSへ提出します。


EIN番号は納税状況が管理される非常に重要なID

8. 銀行口座の開設

会社の登記が終わり、EIN番号を取得した後、会社の銀行口座を開設します。カスタマーサービスの質やアクセスの利便性を考えると、大手銀行での口座開設が無難でしょう。

以上がC Corp設立にかかる一連の流れとなります。C Corp設立のプロセス自体は複雑ではありませんので、順を追って作業をすれば、bylawsの作成など、要所要所で専門家の助けを借りるのみで会社を立ち上げることができるでしょう。

ただし、ビジネスを行うにあたって、それ以外の多くの対応事項があることを忘れてはなりません。ビジネスの内容によっては、事業を行うにあたって特定のライセンスの取得が必要となります。また、販売する商品やサービスによっては売上税の徴収が必要となるため、Certificate of Authorityを入手しなければいけません。さらには、従業員を雇う場合には労災保険(Workers’ compensation)の加入が必須となります。これらは一例にすぎず、一定の条件を満たした場合に対応が必要となる規則も数多く存在します。会計士や人事コンサルタントなど、同類のビジネス立ち上げの経験がある方のサポートを受けながら、会社立ち上げ前の段階で全体像を把握し、一つ一つ丁寧に対処していくことが大切です。

また、General Liability(一般的賠償責任保険)は任意加入ですが、訴訟社会の米国においては、ビジネスをあらゆるリスクから守るために、こうした保険への加入も推奨されています。
固定費用としてどのような費用がいくらぐらいかかるのかを事前に知っておくことも、十分な運転資金を確保する上で大切です。

まとめ

大規模な事業展開を見据えてC Corpの設立を考える方が多いと思いますので、設立後のトラブル等を防ぐためにも、設立時に必要な書類をきちんと作成して文書で保管することが必須です。また、会社が遵守すべき法律を網羅的に理解し、そうした法律に則った形で会社を始めることが、本業に専念するための会社の土台固めという意味で肝になってくると思います。必要に応じて、弁護士や会計士、コンサルタントなど信頼できる専門家のアドバイスを仰ぎながら、一歩ずつ着実に進めていきたいです。

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