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ニューヨークから見た Clubhouse (クラブハウス) | 日本とアメリカでの使い方の違いとは?

ニューヨークから見た Clubhouse (クラブハウス) | 日本とアメリカでの使い方の違いとは?

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先月、突然日本にブームが到来した Clubhouse (以下、クラブハウス)。フェイスブックやツイッターなどで知って急いで参加した人も多いのではないでしょうか。クラブハウスとは、2020年の3月にアメリカでお披露目された招待制の音声をベースとしたソーシャルネットワークのアプリです。様々なテーマでルームが作られ、司会者とスピーカーたちが繰り広げるリアルタイムの話を誰でも聞くことができ、時には手を挙げて発言をすることができるのが魅力。双方向のソーシャルネットワークとして、対面でのリアルな交流が難しいパンデミック中に、シリコンバレーのテック業界の人たちの間で急速に広まりました。そして、2021年1月中旬の時点で2百万人もの利用者がいます。

2009年からアメリカで生活を始め、仕事やプライベートでアメリカ人と触れる機会を持つにつれ、日米でのネットワーキングの方法が大きく違うことに気がつきましたが、現在、クラブハウスも、日米で異なる使われ方がされているようです。

今回は日米の文化の違いを垣間見ることができるクラブハウス事情やクラブハウスの役立つ使い方についてレポートしたいと思います。

そもそも、クラブハウスとは?

クラブハウスの創業者は、テック業界で経験を積んだ二人のアメリカ人、ポールとローハン。2011年に共通の友人を通じて出会い、お互いに人と人を繋ぐ商品に興味があったことで繋がったそうです。当時はそれぞれ違う商品開発に注力していた二人ですが、ローハンが、先天性の稀有な遺伝子の病気を持つ自身の娘のために取り組んでいた仕事で2019年に再会。そこで意気投合し、二人でソーシャルアプリ開発に賭けることにして誕生したのがクラブハウスです。


クラブハウス創業者のローハンとポール © Business Insider

既存のSNSの間をいくクラブハウス

仕事や趣味での共通の興味がある人をフォローして彼らが開くルームに参加し、そうしたルームの参加を通じて同じ興味を持つ多くの人たちと気軽に繋がることができることがクラブハウスの魅力です。クラブハウスのルームはリアルタイム。録音を後から聞くことはできず、リアルだからこその臨場感がクラブハウスの面白さを加速させています。

クラブハウスが画期的な点は、特にアメリカでは、今まではっきりと利用方法の住み分けがされていたSNSの間を狙っているところだと思います。アメリカで代表的なSNSと言えば、フェイスブック、リンクドイン、ツイッター、インスタグラム。オンとオフをはっきり分けるアメリカ人は、数度しか会ったことのない人や全く面識のない人、さらには職場の人とは基本的にフェイスブックで繋がることはありません。フェイスブックは自分のプライベートな出来事を発信する場所だからです。

その逆がリンクドイン。こちらはプロフェッショナルなネットワークを築くプラットフォームとして急成長を遂げました。友人たちと繋がるというよりは、仕事のネットワークを築く場所なので、職場の同僚だけでなく、普段直接話す機会のない自分が働いている会社の経営陣や全く会ったことのない人とも気軽に繋がるために利用するのが一般的。人材紹介会社の人も積極的に使っているので、自分の学歴や職歴を詳しく記載し、プロフィールに選ぶ写真も履歴書に相応しいものを選びます。プロフィール写真を変えたりプロフィールの内容を充実させたりする人がいたら、それは転職活動を始めた証拠、というのはアメリカではよく知られた話です。

それに対してツイッターやインスタグラムは趣味の世界。友人、同僚を超えて自分が興味ある世界を発信している人の世界観を見ることができるのが魅力です。

一方でクラブハウスでは、オンやオフの垣根を超えて、同じ興味を持つ人たちと繋がり、さらにはそうした方々、時には有名な人ともルーム内で時間を共有したり、話をしたりすることができるメリットがあります。これは、今までのSNSでは考えられないことでした。


クラブハウスのメイン画面(例)。興味があるテーマや自分がフォローしている人が参加しているルームが表示され、自由に出たり入ったりすることができます。プライバシーのためにピクセル加工しています。

クラブハウスが提案する新しいネットワーキングの形

クラブハウスがここまで急速にアメリカで広まったのは、長引くパンデミックでなかなか外に行くことができず、ネットワーキングの機会に飢えている人たちが多いからだと思います。アメリカ人は社交好きな国民。

特にニューヨークのように夢を追い求めて世界中から人々がやって来るような都市では、コロナの前は日々様々なイベントやテーマ性のあるパーティー、そしてホームパーティーがあちこちで開かれていました。そうした場は、知らない人とも肩書きや年齢の差を全く気にせず気さくに話し、今後も連絡を取りたいと思った人とはインスタグラムをフォローし合ったり、名刺を交換したりできる貴重なネットワーキングの機会でした。

それと同じことが、今、アメリカのクラブハウスで起こっています。アメリカ人が開いているクラブハウスのルームはしっかりとしたテーマ性があるものが多く、ビジネス系のものでは、例えば、ファッションスタートアップの人たちが語るルーム、オンラインビジネスの秘訣をシェアするルームから高いパフォーマンスをあげる人たちの日々のルーティーンをテーマとしたルームなど。また、エンタメ系では、スーパーボールファンのルームやデーティングルームまで多岐に渡ります。

私が参加したビジネス系のルームは司会者とスピーカーの対話だけでなくリスナーが質疑応答で参加する対話型で盛り上がっていました。例えば、ファッションスタートアップのルームでは、自分のブランドを立ち上げたい女性が質問者として参加し、既にファッション業界で成功している人たちにブランド立ち上げ時の留意点についてアドバイスをもらっていました。その流れで、ルームの参加者が、ぜひ紹介したい人がいるからクラブハウスを離れても話しましょう、と提案していて、今まで対面型のネットワーキングイベントで起こっていたようなことが、都市を超えても始まり出したのは、クラブハウスならではの現象です。

また、あるビジネス系ルームでは、プレゼンに慣れていないという自分のビジネスを始めたばかりの女性がルーム内でプレゼンを行い、プレゼンが得意な他のスピーカーの人がそのプレゼンをより良いプレゼンにその場で変えて披露する、という場面も見られました。

こうしてアメリカ人は、クラブハウスの場を活用して人脈を広げたり、自分のスキルを高めていったりしています。


高いパフォーマンスを上げる人たちの日々のルーティーンを共有するルーム。プライバシーのためにピクセル加工しています。

先日、アメリカ人のスタートアップ系ルームで見つけたニューヨーク在住の中国人女性をフォローしたのですが、私のクラブハウスのプロフィールを見て、インスタグラムを通じて、直接話したいと連絡をいただいて驚きました。彼女は昨年設立のファッションとITを融合させたスタートアップの初期メンバー。早速ズームで話をしたのですが、お互いに自己紹介をしながら、今後ビジネスで何らかの形で繋がっていきましょう、と話が進んでいます。

クラブハウスを始めたばかりでフォロワーもまだ20人ほどしかいない私にこうして声をかけてくれたことに驚いていますが、フォロワーの数といった表面的なことに関係なく、今までのキャリアや今興味があることを書いた私のプロフィールを見て気軽に声をかけてくれたのは、アメリカ流なのかもしれません。

名刺の使い方の違いと重なる日米のクラブハウス事情

日本のクラブハウスのルームでは、フォロワーを増やすためだけの無言ルームができるなど、対話型音声アプリの利点を生かさず、いかにフォロワーを増やすか、ということに注力している人たちも見かけてきましたが、それと重なるのが名刺文化。日本では、初対面の人とはまず名刺交換から入ります。そのため、名刺がたくさん集まっても相手の顔が思い出せないなど、リアルなコネクションがあまり築けていないこともあるのではないかと思います。

一方、アメリカでは名刺はあくまで連絡先を伝えるためだけのカード。そのため、仕事上で初対面の人であっても、もともとメールでやり取りをしていてお互いにメールアドレスを知っている場合には、名刺を交換することはありません。また、イベントやパーティーで知り合った人とは、名刺交換をすることなく気軽に会話が始まります。そして、お互いに話が盛り上がり、今後も繋がりたいと思わない限り、名刺を渡しません。そこには、名刺に書かれているような勤務先やどのような仕事をしているかは、直接話している過程で自己紹介の形で済ませるので、あえて名刺をもらってそうした情報を確認することがない、という事情もあるかもしれません。


アメリカのイベントでのネットワーキングの風景 (画像はイメージ)

これはクラブハウスでも同様で、クラブハウス上のアメリカ人のプロフィールを見ると、過去の勤務先名や現在の興味などかなり詳しく書いている人が多く、ビジネス上のネットワーキングを求めている人たちが多いことが伺えます。

クラブハウスの一番の醍醐味

日米で開かれている様々なルームにリスナーとして参加してみて、クラブハウスの本当の醍醐味は、スピーカーとしてルームを始めたり、リスナーであっても発言する機会を持ったりすることではないかと感じています。スピーカーとして現在のビジネスや関心ごとについて語ることで自分のネットワークは無限に広がります。また、質問者として自分が疑問に思っていることをその道のプロに聞くという利用方法もとても有益だと思います。

クラブハウスの可能性について語るアメリカ人主導のタウンホールというルームで、英語が流暢なソウルを拠点とした韓国人技術者の男性が、日本でも有名なある韓国人が参加したルームに日本人のファンも参加し、たまたまルームにいた韓国語と日本語が堪能な方が通訳をしてくれたことで両国の人たちが一つのルームで盛り上がることができたという話をしていました。今後、そのような形で、世界中の人たちと話をできる機会がクラブハウスを通じて広がっていくのかもしれません。

クラブハウスの今後

クラブハウスはまだβ版のため、アイフォンでしか使うことができません。それでも、クラブハウスの可能性に注目している人たちは多く、シリコンバレーのテック関係者を中心にまだ1500人しか利用者がいず、会社のHPもなかった昨年5月に既に、シリコンバレーでテック企業への投資で知られる有名なベンチャーキャピタルから1200万ドル(約13億円)もの投資を受けています。そして、今年に入ってからの新規投資で、現在、様々な経歴や人種の人たち180人からの投資家がサポートしているというクラブハウス。

今後、そうした資金を使って、アンドロイドへの対応、世界中の人たちがより繋がりやすくなるための仕組み整備を行っていくようですが、ルームでの会話をリードする人たちへの報酬の支払い機能なども加わってくると言われています。ニューヨークの街には、コロナ以前、地下鉄や路上で音楽などを披露する才能溢れるアーティストたちが多く、そうした人たちが楽しい時間を提供してくれたことへの感謝の気持ちを込めてチップを払う文化が根付いていますが、クラブハウスでも、こうしたアメリカらしい文化が見られる日も近いのかもしれません。

長引くコロナの中、人と会ったりすることが制限される中で爆発的にヒットしたクラブハウス。移動はまだまだ制限される日々ですが、世界がどんどん狭くなっていくように感じます。今後のクラブハウスのさらなる進化から目が離せません。

Header Photo by William Krause on Unsplash

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