前回に引き続き、日本とアメリカでのブランドデザインというテーマでColinに話を伺いました。前回のインタビュー記事はこちらから。

Profile:
Colin Johnson
ブランディング・デザインエージェンシーOmencraftのファウンダー。
デザイナーとして20年以上の経歴を持ち、Fortune 500カンパニーのデザインを担当し、The IAB standard rich media ad unitsの制作歴もあり。直近の6年間はRazorfishでCreative DirectorとしてSamsung, Microsoft, Adobe, Intelなど重要なアカウントの担当を行った。

野村:
北米現地のマーケティング会社で3年程度働いて、日本と北米ではブランドデザインに対する考え方の違いを実感しています。その点についていかがでしょうか?

Colin:
まず、日本ではブランドデザインにプライオリティを置いている企業が少ないですね。
中堅規模の企業でもインハウスのデザイナーが1人もしくは2人程度しかいません。デザインに投資をしようという考え方が薄いのではと思います。

アメリカでは素晴らしいブランドデザイン = ビジネスの成功に直結すると考えられ、デザインが悪いと企業の収益に悪影響を及ぼすと考えられています。それに伴って、インハウスのデザイナーの数は日本よりはるかに多いです。

野村:
なるほど。日本の企業がブランドデザインに投資をしない理由は何だと考えますか?

Colin:
正直、決め手になっている理由はわかりません・・・。むしろ、日本人のあなたに聞きたいくらいです笑

野村:
笑。
私の考えは、デザインへの投資を正当化するのが難しいのではと思います。
もちろん汚いデザインより綺麗なデザインの方が良いのはわかりますし、長期的にペイバックできるのもわかります。ただリターンの見通しが立ち辛い中で、デザインに何億もの金額をつぎ込むことはできません。

Colin:
Statistaが発表した2017年に世界で最も価値がある25ブランドを見てください。

25ブランドの中で日本のブランドは2つ、ToyotaとNTTグループしかありません。

日本を代表するSonyや任天堂、三菱、楽天はランクインしていません。
韓国のSamsungは6番目にランクインしていますが、Toyotaは12位です。

ブランドに投資している企業は大きく成長する・・・と私は信じています。
良いデザインとブランディングはブランドの認知と親和性を高めるとても重要の要素です。

ご存知の通り、日本はアメリカ、中国についで世界で3番目の経済大国です。
もし、クオリティの高い製品・サービスを提供する日本の企業が自身のブランドにもっと投資するようになったら、その成長は計り知れません。

先ほどのStatistaのページで触れられている通り、強力なブランドはブランドのもつ利害関係者(ステークホルダー)への影響力が強く、それにつられてビジネスパフォーマンスも向上します。

そして、顧客の選択にも影響を与え、顧客のローヤリティを生み、それを持続し、さらには才能のあるひとを巻き込み、結果的に企業活動の全てのコストを抑えることができます。
そのためブランドとは投資するに値する、とても重要なものです。

野村:
確かにそうですね。

Colin:
特にアメリカのオーディエンスをターゲットにする場合はデザインは最優先事項です。

デザインはシンプルでないといけません。アメリカ人は日本人のように一度に大量の情報を処理するようにできていません。例えば、限られたスペースに大量の情報を詰め込んでいるウェブサイトを見かけますが、アメリカ人はその量の情報をうまく処理できず、圧倒され、パニックを起こします。

野村:
なるほど。面白いですね。

個人的には、大量の情報を処理することにそこまでストレスを感じません。
もちろん、そういう詰め込みデザインが好きということではなくて、これまでそういうデザインをみて育ってきたのがその理由だと思います。「そこまで気にならない」というのが正直なところです。

もし、日本の企業が詰め込みデザインのままアメリカに進出した場合、成功すると思いますか?

Colin:
正直、難しいと思います。おそらく大きな壁となるでしょう。
悪いデザインを通して悪いブランドのイメージを持たれてしまい、顧客離れに繋がると思います。

野村:
なるほど。

Colin:
「日本の企業がブランドデザインに投資をしない理由」という点で、私の意見はデザイナーからクオリティの高い仕事を提示されることが少ないからではと思います。

私がブランドアイデンティティのデザインをすると、大体の方が私のデザインのクオリティの高さや熱量に驚きます。

例えばZyrusという日本の保険テックの会社に向けて、ブランドアイデンティティのデザインをしたことがあります。そこのCEOはシンプルかつモダン、そしてクラシックなブランドアイデンティティを希望していました。

私は‘Zyrus’という英語のレターの中にほんの少し平仮名らしさを入れ、日本の品の良さに敬意を抱きつつ、しかしそれでいてモダンかつビジネスイングリッシュな雰囲気もある、そんなレターマークをデザインし、その仕上がりに満足してもらいました。

Source: Omencraft

一方で、日本のクリエイティブの人のデザインをみたことがありますが、少し磨きが足りないと感じることがありました。

前回も触れましたが、特に理由も無く50個のロゴのカラーバリエーションを提示されたという話にはとても驚きました。そのバリエーションの多さから、そのロゴ作成の裏に深い考えや思いがあったわけではなく、ただ単に見た目の良さそうなものをデザインしたことが読み取れます。

もちろん、日本にはたくさんの素晴らしいデザイナーがいることを知っているので、あくまで氷山の一角だと思いますが・・・。

野村:
デザインのクオリティが高くないのはどうしてだと思いますか?

Colin:
まず、インハウスのデザイナーが少ないことが理由の1つでしょう。
日本の若いデザイナーはシニアデザイナーや他のデザイナーと切磋琢磨してデザインの技術を向上するチャンスが少ないのではないかと思います。

一方で、アメリカでは素晴らしいフィードバックをくれるクリエイティブディレクターやアートディレクターと一緒に仕事をする機会が多く、デザイナーのコミュニティもかなり大きいので、成長する機会が存分にあります。

野村:
日本ではデザイナーの上長は例えばマーケティング、営業などデザインの知識やバックグランドを持っていないことが多いですね。

そういったデザイナーに向けて、何かアドバイスはありますか?

Colin:
シニアデザイナーや他のデザイナーとコミュニティを形成して建設的なフィードバックをもらえる環境を整えることを勧めます。

野村:
最後に読者に言いたいことがあれば、お願いします。

Colin:
日本のクラフトマンシップやプロダクトのクオリティが頭一つ飛び抜けて素晴らしいことは疑いようがありません。これにプラスで素晴らしいブランドデザインがあれば、日本の企業がグローバルマーケットで成長するポテンシャルが大いにあるとみています。

日本の企業が優秀なデザイナーを探している時に、私の名前があがるよう日本でも実績を積んでいきたいと思います。

野村:
ありがとうございました。