インタビュー , 北米進出

フランスの化粧品マーケターに聞くフランスと日本のマーケティング3つの違い

Fumiko Sakuma

フランスの化粧品マーケターに聞くフランスと日本のマーケティング3つの違い

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今回は、約10年間に渡りフランスにて化粧品メーカーのマーケターとして活躍されていた櫻間さんにインタビューをさせて頂きました。

本インタビューではフランスと日本のマーケティングアプローチの違いにフォーカスしてお話を伺いました。

Profile:
櫻間 史子
アメリカの大学で、Communication Media学科勉強中にモノクロの写真の魅力にはまり、一時期カメラマンを目指していたが断念し、学校を卒業後、日本へ帰国。フランス某化粧品会社のマーケティングの仕事を経て、日本ロレアルへ入社、日本で初のロレアルパリ、コスメティックブランドの発売プロジェクトに開発時から参加。発売を経て、フランス本社のマーケティング部へ転勤。当時、アジア全体の化粧品マーケットが発展中で、ブランド、ビジネス強化のために設立された新しい組織、チームに移動になる。 そこでは、調査から、各国のニーズ、ビジネス強化部分を把握後、短期・長期の目的、戦略をたて、それに合わせた製品づくり:コンセプト、フォームラ、製品のパッケージ、そして広告、360マーケティングプランの作成まで携わる。現在は、10年ぶりに日本に帰国。約24年間の化粧品マーケティング、日本それからインタナーショナルの経験をもとに、フランスのファッションブランドであるラコステ ジャパンのマーケティング ディレクターに就任。 ブランドの発信力を高めるべく、マーケットでの現状を調査を通して把握、強化すべき戦略を短期、長期で立てながら、ブランド全体のビジネス拡大を図る。

渡部:
早速ですが、フランスと日本のマーケティングアプローチの違いについて、お話頂けますか?

櫻間さん:
はい。フランスと日本は結構似ている部分もあると同時に全く異なる意識を持つ部分もあるので非常に興味深いです。
また、そもそもフランスと日本はお互いに影響しているというか、日本人にとってフランスという国は、おしゃれで、何か憧れのイメージが強いんですよね。その為、フランスの商品を日本にローカライズする際は、この”フランス”というブラント力に助けられることがあります。
ただマーケティングアプローチという部分に注目すると、やはり日本とはかなり異なるアプローチを取ることが多いですね。
大きく分けて3つ異なる部分があるので、順に説明したいと思います。

マーケティングでフォーカスするのはビジュアルなのか?それとも機能なのか

櫻間さん:
まず、一番の大きな違いは、マーケティングキャンペーンでどこに焦点をあてるのかというところになります。
フランスの場合は、とにかく美しさが大切になります。
この美しさというのは当然、ビジュアル的なところもありますし、使う言葉もそうですね。どう魅了して感動させるかというところにかなり重点を置きますね。
これは美容業界だから特別という訳ではなくて、フランス全体として、美しさを大切にする傾向にあると思いますね。

渡部:
確かにシャネルのCMなどを見ると、一つのショートムービーのような作りになっているイメージです。
美しさとはあのようなイメージですかね?

櫻間さん:
まさしくそうですね。商品は本当に最後の一部分しか出てこなかったりしまよね。
ただ伝えたいのは、その製品だけでなくて、ストーリーとかその製品から連想される美しさになるわけです。

それに対して、日本の美容系のマーケティングアプローチは、かなり製品のベネフィットに焦点をあてるイメージがあります。
例えば、「肌がツルツルに」とか「スベスベ」という製品を使うことによってのベネフィットをかなり強く打ち出すアプローチが目立ちますよね。
あのようなアプローチはフランスではまず見ないですね。
ベネフィットよりも総合的な美しさ重視となります。

渡部:
お話を聞く限り、かなりブランディングに力を入れるイメージですが、マーケターとしてどのような目標を立ててキャンペーンを設計するのでしょうか?

櫻間さん:
当然、最近のデジタル広告では全て売り上げに繋がるKPIを立ててという話になりますが、フランスでは必ずキャンペーン後にブランドリサーチを行いますね。
そもそも化粧品のサイクルはかなり短いということもあるのですが、やはりフランスではその一つの製品に対する反応というより、そのキャンペーンでブランドがどう捉えられたかというところに重きを置きますね。そして、その後長期的にどうブランドを成長させられるかという話になります。

日本とフランスでは異なるブランドの歴史へのハイライトの方法

櫻間さん:
またそのブランドの部分で、フランスのマーケティングアプローチの特徴があるのですが、それは必ず創業者の歴史にハイライトを当てることですね。
新しい製品を発表する際も必ず創業者のどのような背景があってブランドができた背景にまずフォーカスします。
そのベースがあってこその、新しいコンセプトですよという打ち出し方になります。

渡部:
確かに、日本ではそこまで創業者にハイライトをすることはないですね。

櫻間さん:
そうですよね。
ただ面白いのは、日本でも老舗という言葉よく使われたり、長きものを大事にするという考え方はあると思うんですよね。
この点からみると、日本もフランスもただ製品を見せるだけではなくて、その製品の背景まで発信するアプローチは同じですね。
そもそも消費者も背景に惹かれて購入するという傾向が強くなっているということだとは思いますが。

ただ日本とフランスの違いという部分に話を戻すと、歴史、背景にフォーカスするという部分は似ていますが、日本の場合は、何十年の歴史などの長さに焦点を当てて、フランスは創業者のブランド創設の意図に焦点を当てるという違いがありますね。

例えば、現在は化粧品業界を離れラコステ・ジャパンでマーケティング・ディレクターを勤めていますが、このラコステでも、創業者へのハイライトは必ず行われますね。
発明家でもありテニスプレイヤーのであった創業者ルネ・ラコステの創業時のエピソードなどにハイライトを当てることが多いです。
テニスというベースがあって、そこにストリートの要素を加えたりと、ブランド創設時のベースに現代のバリューを追加するというアプローチがよく取られますね。

シンプルなバリューとマルチなバリューの違い

櫻間さん:
最後の違いは、価値観の違いにも繋がるとは思いますが、シンプルバリューとマルチバリューになります。
フランスでは本当にいかにシンプルにバリューを伝えるかというところに注力しますね。

マーケティングのアプローチとしても、その製品の一つの特徴がいかに優れているかという部分に焦点を当てることになります。
新商品の場合は、色々なバリューがあったとしても、以前のシリーズと比べて、何がアディショナルのバリューなのかが一目でわかるように、あえてその一つのバリューに絞ってメッセージを打ち出すことになります。

それに対して、日本では、マルチなバリューが好まれる傾向にありますよね。
一つの製品で3つも4つもベネフィットがある製品が、消費者から見ると素晴らしい製品ということになります。

これに関しては、マーケティングだけではなくて、文化、価値観の違いだと思ってます。
例えば風邪薬を例にするとわかり易いかなと思いますが、日本の場合風邪薬を買いに行くと、総合風邪薬というのが売っていて、その一つで鼻も喉も熱も下げてくれるという薬が売ってますよね。
フランスの場合はこのような薬はまず存在しないですね。
鼻水なら鼻水に徹底的に効く薬、熱なら熱に効く薬と完璧に役割が別れています。
普段の生活からマルチバリューではなくてシンプルなものが求められていることがわかります。

また化粧の例でいうと、日本ではメイクアップ落としがあって、洗顔があって、化粧水があって、乳液があって、美容液がある。このようなレイヤリングの文化を築きあげたのが日本なんですよね。
これに対して、フランス人にはこのような認識は全くないですね。
シンプルに自分の美しさを引き出したいという風に考える傾向があります。

価値観として大切にされているシンプルさがマーケティングのアプローチの方法にも繋がっているのではないかなと思っています。

日本の企業がフランスに進出する場合マーケで気をつけないといけないこと。

渡部:
これまでのフランスと日本のマーケティングのアプローチの違いを踏まえて、もし日本企業がフランス進出をする場合、マーケティングで気をつけなければいけない点はありますか?

櫻間さん:
そうですね、ここまでもいくつかの例を話してきたように、フランスと日本では消費者のニーズも違うし、それに対しての打ち出し方も大きく異なるんですよね。
化粧品ということだけで言えば、日本の製品は確かに高品質で、効果が出るものが多いと思います。だからといってその強みを何個も並べていてはフランスでは受けないんですよね。

化粧品以外の製品でも、機能などをみると日本の製品はすごい高機能なものが多いと思います。それをフランスでは、いかにシンプルにその強みを説明できるかが鍵となると思いますね。
当然マーケティングリサーチはすると思いますが、どういう打ち出し方が一番ユーザーに響くのかというコアになるものを理解する必要があると思います。フランスの化粧品でいうとそれは、美しさとシンプルさということになりますね。

最後に一言

渡部:
最後に今後海外進出を検討している企業または個人に向けてアドバイスを頂ければと思います。

櫻間さん:
まず企業に関しては、先ほど申し上げたように、ニーズをしっかり理解するということですね。その上で日本の企業のバリューを追加していくことが良いかと思います。
化粧品のマーケティングでいうと、日本人の持つ繊細さや感受性の豊かさは、かなり評価されていたポイントだと思います。
商品の細部に渡るテクスチャーの繊細だったり、その表現方法の感受性の豊かさは日本人ならではの強みですからね。
そのような追加のバリューを、ニーズを理解した上で、いかに簡潔に発信できるかが鍵になると思いますね。

また個人に関しては、日本人としてということも当然あるのですが、まず個人としてバリューを出せるかが非常に重要になりますね。フランスでは、会議中に自分の言いたいことを伝えるには、かなり強い口調で話さないとそもそも誰も聞いてくれないということがありました。
そもそもこちらでは、ディスカッションに入れないで、聞いてるだけの人はバリューがない人として捉えられてしまうんですよね。
だからディスカッションに入れる語学力が必要になるし、割って入れるような度胸が必要になるかなと思います。
自分が正しいと思うことを、しっかり相手に響くように発信できるかが鍵かなと思いますね。

まとめ

マーケティングに置いて一番重要視されることが「美しさ」というのは、フランスという国を物語っているなと感じます。
同時に日本人がもつ独特の美へのアプローチというのは、このような「美しさ」を重要視する国では、受け入れやすいのではないかなと思います。
櫻間様のおっしゃる通り、最終的にはいかにその「ユニークなバリュー」を、「簡潔」に発信出来るかという点は、海外進出の大きな鍵となるのではないでしょうか。

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