Touch-Baseの6人目のインタビュウィーは、ロサンゼルスのマーケター板倉さんです。
板倉さんは約20年のアメリカ滞在歴があり、今は米国法人Zero-Hachi Rockの代表を勤められています。

プロフィール
板倉光孝(Zero-Hachi Rock, Inc. 代表取締役)
カリフォルニア州レドンドビーチ在住。愛知県豊田市生まれ。21歳で渡米後、アルバイトをしながら、バンド活動とサーフィンに没頭。その後、メディア運営に興味を持ち始め、ビジネスの世界へ。全米最大級の日系オンラインメディア運営会社にて、広告販売を中心とした営業部の立ち上げ、新規エリア開拓、マーケティング戦略・イベント企画の立案、遂行など、営業/販売サイドの統括責任者として実績を残す。11年連続売上増に貢献した後退社。2016年1月、米国法人 Zero-Hachi Rock, Inc.を設立。ロサンゼルスを中心に、起業支援、日系企業のセールス/マーケティング支援、日本企業のアメリカ進出支援を主な事業として活躍中!

野村:
本日は宜しくお願いします。

板倉さん:
宜しくお願いします。

野村:
簡単に今までの経歴を教えて頂けますか?

板倉さん:
はい。約20年前にロサンゼルスに来ました。当初はバンドやサーフィンばっかりしていたのですが、バンドのCDを売るためにネットを使ってエンタメ系のメディアを立ち上げようと考えていました。

そんなことを考えていたある日、全米最大級の日系オンラインメディアの社長が私のバンドのライブを見に来ていてお話する機会があり、勉強も兼ねてインタビューさせてくださいと申し込みました。

すぐにOKをもらい、社長の家にお伺いしてインタビューをさせてもらい、独学で試行錯誤しながら作った自分のメディアを実際に見てもらいました。
その際「これでお金がもらえると思ってるの?」とウェブサイトにダメだしをくらい(笑)、色々お話をしている流れで「うちで営業やってみる?」とお誘いを頂いたんです。

メディアのことが勉強できる良い機会だと思ってすぐにお願いすることにしました

その会社で最終的には11年ほど働くことになるのですが、営業部門の統括としてメディアの広告販売の仕方、アメリカでの多エリア展開を通してマーケティングの方法などを学ぶ機会を頂きました。

野村:
すごい経歴ですね。どのようにアメリカでの多エリア展開を推進されたのでしょうか?

板倉さん:
初めは、普通にコールドコールですね。手当たり次第に電話をかけて広告出しませんか?というアプローチをとっていました。ただ、その方法だとほとんど誰も相手にしてくれなくて、アプローチの方法を何度も考え試して、最終的に取材という形を取る方法を思いつきました。インタビュー記事の中に多少宣伝も載せますので、取材させてくださいという感じで。

これの良いところが、インタビューしたいと言われて悪い気はしないのでアポが取りやすい、インタビューした人が心理的に自社メディアの味方になってくれる、サービス案内をする前にいろんな話がスムーズに聞ける、お会いした人の情報を自社内にデータ化できる点などです。数百人単位の新しい人にお会いするので、なかなか全ての人を覚えるのが大変で、写真を撮ることで顔も思えやすくなるというメリットもありました。

野村:
なるほど。素晴らしい発想ですね。

板倉さん:
これを思いついた時、自分は天才かも!?と思いました(笑)

野村:
(笑)

板倉さん:
そうして売り上げも伸びて、営業という仕事をとても楽しんでいたんですが、お客さんに提供(販売)できるのが自社の広告だけだということにジレンマを感じるようになりました。お客さんの集客の悩みはもちろん、他のマーケティング方法の提案や、経営の悩み、人材採用の悩みなども一緒になって考え解決してあげられるようなコンサルティングの領域までをやってみたくなったんです。そこで自分の会社Zero-Hachi Rockを立ち上げました。

アメリカ進出支援や、営業・マーケティング支援が中心ですが、今は、ソーシャルメディアを使ったマーケティング支援に力を入れています

フォトグラファー、コピーライター、ビデオプロダクション、ウェブデザイナー、デベロッパーからM&Aのアドバイザーなど、各分野のスペシャリストと連携して総合的なマーケティング支援を可能にするサービス提供をしています。

海外進出サポートの中にはAmazon.comで半年間テストマーケティングをするサービスもあります。日本から商品だけ送って頂ければ、私たちの方で倉庫の手配、在庫管理から販売・プロモーションまで全部させて頂いて、どの程度商品の引き合いがあるか見極めることができます。

サービスに関しては、常にクライアントのニーズを見極めながら必要なものがあれば柔軟に加えていく予定で、最終的には、クライアントのオーナーさんがやりたいことをバックアップし具体化したり、その想いを形にしてあげられる戦略パートナーのような存在になりたいと考えています。


注釈: 板倉さんとパートナーのフォトグラファーとコピーライター

アメリカのビジネスは戦力人材を現地調達した方がうまくいく3つの理由

野村:
11年近くアメリカで営業/営業統括として活躍された経験から、日本企業がアメリカでビジネスをする際のポイントをお伺いできればと思います。

板倉さん:
ローカルのマーケット進出を目指す前提で考えた場合の僕の意見です。
少し極端かもしれませんが、ロサンゼルスでビジネスをやるならロサンゼルスの現地の人をマネージャーとして雇ってしまって、全部任せてしまうくらいの方が良いと思います。もしくは戦力となる人材やサービスを現地調達する。
業態によってはむしろゼロから作るよりも、今あるビジネスを買う、居抜き物件を買うというのも方法としてはあります。

野村:
全て現地で調達してしまうということですね・・・。

板倉さん:
そうですね。大きく分けて理由は下記の3つです。

1. 社内コミュニケーションがうまくいかない
2. 現地の人に刺さるアプローチは現地の人が一番知っている
3. 付いて回るビザの問題

社内コミュニケーションがうまくいかない

板倉さん:
前職でアメリカ人の部下を持った経験や、取引先の方のお話を聞いていても感じますが、皆さん同じような悩みを抱えていることが多いんです。言語や文化の壁はもちろん、仕事のやり方や考え方が違うのでなかなかコミュニケーションが噛みあわないことも少なくありません。

例えば、アメリカ人の大半は直感とスピード感を大事にし、失敗することは恐れずに物事に取り組みます。それが日本に親会社のある日系企業の場合、いちいち日本の決済を待たないといけないと、彼らのモチベーションを維持するのが難しくなります。前の人のインタビューでも書いてあったように会社への忠誠心がないというのも本当にそうで、自分にメリットがない、この会社で学ぶことはないと判断すればすぐに会社を離れます。彼らとうまくコミュニケーションを取って、事業を推進していくためには色々と日本のやり方を捨てないといけません。

野村:
そうですね。カナダとアメリカだと少し違うとは思いますが、僕も仕事のやり方の違いに関して経験したことがあります。

僕が今のカナダの会社に入社した当初、編集作業をお願いした時に必要な情報は全部揃っているかの最終チェックをお願いしたときに、It should be fine. (おそらく大丈夫)と返事をされて、いや「おそらく」とかじゃなくて大丈夫なのか大丈夫じゃないのかどっち?って聞き直したら、また It should be fine. って言われてイラっとしたのを思い出しました(笑)。
その後、結局大丈夫じゃなかったんですが(笑)、そういうところは現地の人のやり方にあわせていかないと仕事がうまく進まないので、こっち側が先回りしてうまく調整していく必要があると思いました。

板倉さん:
そうですね。
もし日本に本社があって板挟みになる状態になると大変です。
本社からは日本のやり方に従うように言われるが、そのやり方に従うと現地のアメリカ人の部下がモチベーションを保てないという状況に陥ってしまいます。

現地の人に刺さるアプローチは現地の人が一番知っている

板倉さん:
2点目は「現地の人に刺さるアプローチは現地の人が一番知っている」です。
例えばコピーライティングの話でいうと、今で約20年ほどアメリカに住んでいますが、正直ソーシャルメディアなどでもユーザに刺さる言葉のチョイスがいまだによくわかりません。マーケティングや営業って意味が通じれば良い訳ではなくて、その時々で適した表現や言い回しを使う必要があります。

その辺の感覚って、結局育ってきた環境で培うもので、例えば同じ英語を使っていてもエリアによってどういう言葉の使い方がいいか、どういうアプローチで営業やマーケティングをすればいいかが変わります。

野村:
仰るとおりですね。
英語の話でいうと、文法が合っているとか意味が通じればいいという訳ではなくて、この状況ではこの表現を使うのがナチュラルとか、読み上げたときのリズムがよくないとかはよく指摘されます。

同じ英語圏でもエリアによって使うビジネスの考え方やアプローチが違う点も同意です。
最近イギリスから来たアカウントマネージャーと一緒に仕事しているんですが、カナダとイギリスでのビジネスの仕方やマーケティングのアプローチが全く違います。

僕はむしろ、イギリスと日本の方がアプローチの仕方が似ていると思っていて、例えばビジネスメールの文章の固さから営業電話がかかってきたときの対応の仕方まで、イギリスは日本よりです。

他にも、カナダ出身の会社がオーストラリアでマーケティングする時、同じ英語圏ですが現地のコピーライターとデザイナーを雇わないとうまくマーケティングできないという話も聞いた事があります。

板倉さん:
そうですね。ちなみに、ここで現地の人といったのは単にアメリカ人を雇えば良いというわけではなく、ロサンゼルスならロサンゼルスの、ニューヨークならニューヨークの人という意味です。

アメリカでは街によって人種の割合や文化背景が異なり、取るべきアプローチの方法も変わります。

例えば、大手回転寿司チェーンの例をあげると、日本では毎年100店舗を増やしていくくらいのスピード感だったんですが、アメリカ進出後数年経っていても10店舗ほどしかない状態です。その理由の一つは、日本とは違ってエリアによって住んでいる人種や収入層、宗教、食文化の違いなどが多種多様であること。日本国内の感覚で、モデル店をコピーしてどんどん増やしていくフランチャイズ展開が難しく、1店舗、1店舗、その場所の客層にあうようにメニューも含めカスタマイズしないといけないからだそうです。

野村:
1店舗ずつカスタマイズするのは大変ですね・・・。ローカライズという表現が本当にしっくりきます。そうなってくると、各地各地で現地のマネージャーを雇ってしまった方がいいというのは納得です。

板倉さん:
その通りですね。

付いて回るビザの問題

板倉さん:
最後はビザの問題ですね。これはアメリカで日本人(外国人)を雇う時には避けて通れない問題です。
その人がどれだけ優秀であろうが、滞在できるビザを取得しないとアメリカに住むことすらできません。

野村:
ビザの問題は日本にいると、なかなか気付かないですが誰もが直面する大きな課題ですよね。
僕もカナダに来てから、ずっとビザのことを気にしながら生活してきました(笑)

板倉さん:
ビザの問題は、外国でビジネスをするという不利な状況の中、想像以上に大変ですし、経営側にとっても非常にセンシティブな問題になってきます。

アメリカで日本人を雇うケースだと、会社のサポートでビザを用意しないといけなくなります。必要書類を準備し、規定通りに就労ビザ申請を行なったとしても、抽選で落とされるケースもあります。ただでさえ優秀な人材確保と保持が難しいアメリカで、ビザが降りない可能性を考えて予備的な人材配置が必要だったり、ビザが降りなければ新しい人材を教育するコストもかかりますし、ビザ申請費用や更新費用、弁護士費用などもその都度かかってくるんです。
そう考えると、初めから現地の人をマネージャーに立てて、そのマネージャーを中心にチーム編成をしていった方が、結果的に早道でコスト的にも抑えられるのでは?と思います。

最後に伝えたい事

野村:
最後に伝えたい事をお願いします!

板倉さん:
アメリカの日系企業同士がもっと助け合えたらいいなと思います。
前職で営業をしている時に感じたことでもありますが、ロサンゼルスの中国系、韓国系の企業同士は団結し助け合っていると感じることが多いけど、アメリカの日系企業同士はお互いを敵対視して協力し合うことに積極的ではないように感じます。もっと大きい視点でみて、この業界を盛り上げていこう、このエリアを盛り上げていこうってなればもっと楽しそうだなって思います。

私の会社のコンセプトでもありますが、所有より共有する時代。
例えばアメリカで長くビジネスをやっている先人がいればその方が積み上げてきた経験や知恵に学ぶ、どこかに余っているリソースがあるんだったらそれを他の会社に使わせてあげるっていう感じでお互い助け合う事ができれば良いなと思います。

あとは、日本の若い人にもっと海外に出て欲しい。
オンライン上の情報だけでは決してわからない体験や感動が必ずあると思うし、世界規模でものを考える幅を持った人材がこれからの日本にはもっと必要だと思います。

私はアメリカに来て、自分の常識やアイデンティティが崩壊し視野の幅が広がったと思いますし、日本にいたら気付かなかったことにたくさん出会いました。困難があった分だけ経験値になるのでぜひ挑戦して欲しいと思います。

ボトムライン

今回はZero-Hachi Rockの代表、板倉さんにアメリカでのビジネスについてお伺いしました。板倉さんが仰ったように、こっちにいる日本人は他の日本人に対してどこか冷たい、ヨソヨソしい感じがあります。うまく助け合える関係を作っていくべきですね。