Touch-Baseの3人目のインタビュウィーはロサンゼルスのHRエージェントPasonaで活躍されている柴原さんです。柴原さんはアメリカに合計10年、その内ロサンゼルスに5年以上も生活して仕事をされており、マーケティング目線ではなくHR目線からロサンゼルスのビジネスの知見を伺いたいと思います。

今回のインタビュウィー柴原さんの簡単な略歴:
柴原麻里(しばはらまり)
2011年にMichigan State University卒業後、同年米国パソナに入社。5年間、ロサンゼルスにて様々な業界の企業相手に人材紹介、派遣を行う。
昨年度、日系の航空機会社のRPO(Recruitment process optimization)プロジェクトマネージャーに抜擢され、現在はシアトルにてクライアント先に常駐し、クライアントの採用に関する戦略立案からオペレーションマネージメントを担当している。


注釈: 1番左の方が柴原さん

野村:
宜しくお願いします。

柴原さん:
宜しくお願いします。

野村:
簡単に今の業務内容を教えてください。

柴原さん:
はい。もともとPasonaのロサンゼルス支社で日系の企業さん向けに人材紹介を5年ほどやっていました。1年ほど前からシアトルにある日系の航空機系の会社に常駐して、採用の部分のお手伝いをしています。

簡単にいうと、いち企業の採用窓口になっているイメージです。人材会社への連絡・調整、アプリケーションのスクリーニング、面接の同席まで全てこなします。

また直接採用も行っており、採用用のウェブサイト制作のディレクション、LinkedIn、Google Adwordsへの広告出稿と運用、ローカルの新聞や業界紙への出稿も行います。

野村:
柴原さんの会社も人材会社というカテゴリだと思いますが、他の人材会社との調整をするっていうのは何か不思議な感じですね(笑)、基本的な採用業務を行いながら、ウェブサイトのディレクション、広告運用をこなすのは大変だと思いますが、いかがでしょうか?

柴原さん:
そうですね、特に初めの土台を作る時は大変でした。
ただ、ある程度運用フェーズに入ってくるとそこまで手間をかける必要がないので今はだいぶ落ち着いてきました。

野村:
なるほど。ちなみに興味本位ですが、人材会社を通すケースと直接採用をするケース両方を行われて、どちらが効果的だと感じますか?

柴原さん:
どちらが良くてどちらが悪いというよりは両者にメリット、デメリットがあるのかなと感じます。

人材会社を経由するのと直接採用する場合だとアプリケーションの母数が全く違います。
感覚的には人材会社を経由して集まる数が1だとすると、直接採用で集まるのはそれの5倍ほどになります。

人材会社の場合、こちらが要望を伝えればアプリケーションの精査をしてくれるので、そこまで条件から外れた人と面接ということはなく効率的です。

一方で直接採用の場合だと、例えば経験年数、スキルレベルでこちらの条件に合わないアプリケーションが来るケースがあり、余分な工数がかかります。ただ、直接採用をすると露出度があがり、普段付き合いのある人材会社経由で出会えないような方から問い合わせが来るので、リーチを広げることができます。

ロサンゼルス進出の際の4つのポイント

野村:
柴原さんはロサンゼルス歴が長いと思いますので、その辺の話を伺いたいと思います。
日系企業がロサンゼルス進出する際のポイントを教えてください。

柴原さん:
最近はどこの日系企業さんも事前にロサンゼルスの情報を得てから来られているなと感じます。なので、そこまでズレている企業さんは正直ほとんどいません。
おそらくアメリカ進出セミナーみたいなのがあって、それで勉強されてからロサンゼルスに来られるのではと思います。

それを踏まえてポイント4点ご紹介したいと思います。

いきなり現地のマーケットに飛び込まない

柴原さん:
1点目は「いきなり現地のマーケットに飛び込まない」です。

野村:
なるほど、今までインタビューをさせて頂いたニューヨークの方と全く逆の意見ですね(笑)

過去のインタビュー記事:
ニューヨークのマーケターに聞く日系企業が現地でやってしまう5つの間違い
PRスペシャリストに聞くニューヨークでのPR成功のための4つの秘訣

柴原さん:
そうですね(笑)

最初は現地でのコネクションがないので、情報を貰えるところにあたりにいかないといけません。そうなるとJETROや日系のコミュニティなど日系のソースになります。まずは日系のコネクションを作り、日系の市場を攻めて基盤をつくることが大切です。

ロサンゼルスは日本人/日系企業の数がアメリカの中でもトップクラスに多いです。
変な話、ロサンゼルスにいる現地の日本人だけを相手にしていてもそれだけで回ってしまうくらいの規模感があります。

それらを踏まえて、現地の日本人の市場 -> 他のアジア人の市場 -> アメリカ人(他の人種: 黒人・白人・ラテン・その他)の順番で着実に市場を開拓しているところがロサンゼルスではうまくいっている印象があります。

例えば伊藤園さんの例でいうと、もともと日系マーケットやダイソーでしか商品を見かけなかったのですが、段々と現地のマーケットでも見る機会が増えて今では他のアジア人はもちろん、都市部に住んでいる健康志向のアメリカ人の間でも人気です。

ただ、初めは日系のマーケットからスタートし着実に基盤を作っていったのが成功要因だと思います。

他にもロサンゼルスで成功しているJinyaというラーメン屋さんの例でいうと、
初めは日本人にターゲットを絞ったコンセプトにして日本人が多いエリアと中国の人が多いエリアに進出、そして着実に売上を伸ばしていった後にハリウッドに出してアメリカ人(他の人種: 黒人・白人・ラテン・その他)にアプローチしたという手順を踏んでいます。
ハリウッドに出したお店ではコンセプトを変えて、自分でラーメンのトッピングをカスタマイズができるメニューを用意し、アメリカの人に受けいれられる工夫をされていました。

ロサンゼルスは街の区画ごとにはっきり人種がわかれます。
ダウンタウンに行っても、ここからここまでは韓国人の居住区、ここからここまでは中国人、ここからここまではメキシカンというようにはっきり分かれています。

そのため、例えばレストランの場合だと、出店するエリアによってコンセプトを変えていかないとうまくいきません。ロサンゼルスのどこのエリアでも通用するお店のコンセプトっていうのはないのかなとさえ思います。

ロサンゼルスでは初めから現地のアメリカ人を先に攻めるよりも、まずは慣れている市場で基盤を作りつつ地道にブランドの名前を売っていってからアメリカ人の市場を攻めた方が得策です。

野村:
日系のコミュニティで流行ったブランドって、現地の人のコミュニティに流れていくこともあるんですか?

柴原さん:
コミュニティ伝いで広がるということではないですが、例えばサービス業の例でいうと、日系と現地のコミュニティが交わるようなロケーションにお店を出すことで現地の人の目にもとまり、そこからお客さんが流れてくることがあります。

そこで日系の基盤を作りつつ、日系以外のコミュニティ以外のところからも少しずつ認知されるように展開するのがいいのかなと思います。

現地の人を雇うべきかをしっかり考える

柴原さん:
2点目は「現地の人を雇うべきかをしっかり考える」必要があるかなと思います。

野村:
これまた、今までのインタビューと真逆ですね(笑)

柴原さん:
はい(笑)、日系企業がロサンゼルスに進出する際、
大体、駐在で2,3人の営業をとばして現地でアシスタントを雇うのがよくある流れですが、中には、ロサンゼルスでやるんだから現地の人を雇いたいという人がいます。

その際に一度「指示が出せるか」をしっかり考えた方がいいのかなと思います。

もし現地の人を雇った場合、その人にマーケット開拓をしてもらうことになると思いますが、その人としっかりコミュニケーションをとって指示が出せないと機能しません。

野村:
なるほど、オペレーションの観点から見ると納得です。
どれだけ優秀な人を雇っても、マネジメントする人とコミュニケーションがうまくいってなければその人の実力を十分に発揮させてあげることができません。

ただ、その問題って現地の人とコミュニケーションが取れない人が来てしまうのが問題だと思っていて、本当はそういう人をロサンゼルスに送るべきではないのではと思います。

柴原さん:
そうですね。おっしゃる通りだと思います。
その営業の方が英語でのコミュニケーションに問題がなくてしっかり指示が出せるのであれば現地の人を雇うべきだと思うのですが・・・。

野村:
でも、英語でのコミュニケーションができない人が来てしまう事が多いと?

柴原さん:
そうですね。英語のコミュニケーション能力は高くないと思います。

ロサンゼルスに飛ばされる人って日本で成功された方が多く、例えば中小の会社だと営業部長をやっていたという人が来ます。そのため海外での経験、英語力はそこまで選定基準になっていないケースが多いのではと思います。

こっちに来ると英語の問題だけではなく、仕事のやり方も全く違います。日本流のやり方で成功して来た人が現地の人を雇った時に空回りしてしまう可能性が高いです。

それらを踏まえて一度しっかり現地の人を雇うべきかを考えた方がいいと思います。

日本でのやり方・考え方を押し付けない

柴原さん:
3点目は「日本でのやり方・考え方を押し付けない」です。
さきほどの話の続きですが、たまに日本での考え方・やり方をガチガチにもってくる人がいます。

野村:
すごくわかります。初めは僕も日本でのやり方しか知らないのもあって、カナディアンに日本でのやり方を押し付けようとしていました。例えば報連相(ほうれんそう)を逐一徹底するように求めたり、期限を何がなんでも守らせようとしたりしていました。それがプロフェッショナルだろ!的な(笑)、全く機能しませんでしたが・・・。

柴原さん:
そうですね。それはよくある失敗例ですね(笑)

あとはプロセスを重視する日本のやり方と、結果を重視するアメリカのやり方でズレが生じることがあります。

野村:
日本では結果が良くても決められたプロセス通りにやらないとダメ、今回はうまくいったけど次回はトラブルになるかもしれないという理由で怒られる・・・

柴原さん:
そうですね。そういうところでズレが生じる事があります。
例えば結果を出していてもすぐ帰宅する、毎日出社の時間に少し遅れる、という点を気にしすぎてコミュニケーションがうまくいかないこともあります。

他にもよくあるのが、仕事に対する考え方の違いです。
日本ではビジネス上で付き合いのある相手の生活を尊重することはあまりありませんが、アメリカではビジネス上の関係であろうと、相手の生活/プライベートを尊重します。

野村:
僕も日本で仕事していた時は休みであろうが関係なく電話をかける、風邪で数日寝込んでいようが、納期がくれば関係なく催促の連絡をするということをやっていました。

柴原さん:
自分が週末働いているので、それを相手にも求めてしまうんですよね。
例えば時差の関係でこちらの時間の日曜日の夜11時、12時くらいに電話をかけてくる日本の会社もあります。
もちろん、アメリカではそういうことをされるとよく思われません。

野村:
そういった感じで、なんでも「日本流」でやりすぎて、逆に仕事を依頼しているエージェンシーサイドから契約を切られたという話を聞いた事があります。

柴原さん:
そうですね。もし、今後グローバルにビジネス展開を進めていきたいのであれば、
相手のことを思いやった仕事のスタイルとは何かを考えた方がいいのではないかと思います。

現地の日本人と日本の日本人は違うことを知る

柴原さん:
最後に細かい点ですが「現地の日本人と日本にいる日本人は違う」ということを知るのが大切かなと思います。

現地の日本人の採用をする場合、日本から来たばっかりの日本人と現地で長く住んでいる日本人の感覚とのズレがあることが多いです。

ロサンゼルスに来たばっかりの日系企業さんは採用の際に日本で働いてきた方をイメージすることが多く、こういう話し方をする、受け答えをするという前提で来るんですが、現地の日本人はもう少しカジュアルな感じで受け答えをします。

それで、あまりいい人がいないという結論になってしまう。

野村:
すごくわかります。僕自身、日本で4年ほど仕事をしてからバンクーバーに来たんですが、初めにバンクーバーに来た時に、なんでこっちにいる日本人はこんなに仕事が雑な人ばっかりなんだろうと思いました(笑)

やるって言ったことを平気で忘れるし、期限は絶対守らないし、むしろ仕事を舐めているんじゃないかくらいに思って憤慨したのを覚えています(笑)

どこかで日本流を押し付けようとしていたんだと思います。

例えばそれがカナディアンだったら、まぁカナディアンだしと思って寛容になれますが、それが日本人だとどこかで日本人のスタンダードを押し付けたい気持ちになってしまうのかもしれません。

柴原さん:
そうですね(笑)、ロサンゼルスに来たばっかりの日系企業は現地の日本人を雇う場合でも採用基準はけっこう高く設定しまうことがあるので、アシスタントの採用でも苦戦してしまうことが多々あります。

最後にひとこと!

野村:
最後にひとことお願いします!

柴原さん:
日系企業さんは、相手のことを思いやった仕事のスタイルとは何かをもう少し考えた方がいいのではないかと思います。

もしかしたら海外、特にアメリカの人から見ると日本って働きにくい国、一緒に仕事したくない国という印象がついてしまっているんじゃないかなと思います。

もちろん会社の体制・考え方の根本を変えないといけない話かもしれませんですが、そう思われるのはすごくもったいないし、変えていかないといけないことだと思います。

ボトムライン

今回は、ロサンゼルス進出の際の4つのポイントをご紹介しました。
「初めから現地のマーケットに飛び込むのは良くない」というのは前回のインタビューとは真逆で驚きました。同じアメリカ内でもロサンゼルスとニューヨークでここまで違うのかと、話を伺っていてとても興味深かったです。

仕事のやり方の違いは僕自身バンクーバーに来てからずっと感じていたところで、北米では相手を思いやらない仕事のやり方をしていると相手にされなくなります。もちろん仕事を頑張るのはいいことですが、それを相手に求めて空回りしないよう注意が必要ですね。